目次
奇妙なフリーマーケット
ある週末、俺はふと気が向いて近所のフリーマーケットに足を運んだ。
アンティーク雑貨や古本が並ぶ中、ひときわ気になるブースがあった。
そこは、年老いた男性がひっそりと店を構えており、テーブルにはいくつかの古いメガネが並んでいた。
「いらっしゃい、若いの。このメガネ、試してみないか?」
そう言って、老人は俺に一つのメガネを差し出した。
フレームは細く、少し傷がついているが、レンズは不思議なほど透明だった。
「どんなメガネなんですか?」
俺が尋ねると、老人は微笑みながらこう言った。
「見えないものが見えるようになるメガネさ。」
試しにかけてみると
冗談だろうと思いながらも、俺はメガネをかけてみた。
すると――
世界が、少し違って見えた。
いや、違う。
「うわっ……!」
俺は思わず後ずさった。
周囲には、見知らぬ人影がうっすらと浮かび上がっていたのだ。
人影はまるで霧のように透明で、ゆっくりと動いている。
俺は思わずメガネを外した。
すると、さっきの人影は消えた。
再びかけると、また人影が浮かび上がる。
「……これは、幽霊ですか?」
俺が震えながら尋ねると、老人はただ静かに頷いた。
「まあ、そんなところだな。ただし、これはただの幽霊を見るメガネじゃない。この世とあの世の狭間にある“残されたもの”が見えるようになる道具さ。」
俺はゾッとしながらも、そのメガネを買うことにした。
見えてしまったもの
メガネをかけながら街を歩くと、時折、不思議なものが見えた。
例えば、古いアパートの前にたたずむ女性の影。
ぼんやりと立ち尽くし、何かを待っているようだった。
例えば、公園のベンチに座る小さな男の子。
でも、そのベンチには誰も座っていないはずだった。
俺はメガネを外したりかけたりしながら、ただぼんやりと彼らを眺めた。
彼らは何かを訴えるでもなく、ただ静かにその場に存在していた。
最後に見たもの
ある日、俺は何気なく自分の部屋でメガネをかけてみた。
すると――
部屋の隅に誰かが座っていた。
「えっ……」
心臓が止まりそうになった。
そこにいたのは――
幼い頃に亡くなった、俺の祖母だった。
祖母は優しく微笑んでいた。
「おばあちゃん……?」
そう呟くと、祖母はゆっくりと頷き、そして、静かに消えていった。
俺はメガネをそっと外し、しばらく呆然とした。
それ以来、俺はそのメガネをかけることはなくなった。
そして――
ある日気づくと、そのメガネはどこかへ消えてしまっていた。
まるで、最初からなかったかのように。
見えないものの存在
あのメガネで見たものは、一体なんだったのか。
あれは本当に「この世に残されたもの」だったのか、それとも俺の思い込みだったのか――。
答えはわからない。
でも、それ以来、俺は時々、視線を感じることがある。
あのメガネをかけなくても、誰かがそばにいるような気がするのだ。
それが怖いものなのか、優しいものなのか――
俺には、もう知る術はない。
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