怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

視えてはいけないもの 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

「おかしいな……。」

最近、見えないはずのものが見える ようになった。

最初は些細な違和感だった。

通勤電車の窓に映る、自分の後ろの座席。

誰も座っていないはずなのに、ぼんやりとした影が揺れていた。

第一章:視えるようになった日

異変が始まったのは、ある雨の日だった。

傘を忘れた俺は、近道をしようと裏路地に入った。

そこで、小さな古びた骨董品屋を見つけた。

何気なく店内に入ると、店主の老人がニヤリと笑い、こう言った。

「お客さん、いいものがあるよ。」

勧められたのは、一見普通のメガネだった。

「視界がはっきりする特殊レンズでね、疲れた目にも優しいんですよ。」

試しにかけてみると、不思議と目がスッキリした。

値段も安かったので、そのまま買って帰ることにした。

しかし――

このメガネをかけた日から、異変が始まった。

第二章:増えていく影

翌日、メガネをかけて通勤した。

すると、駅のホームで奇妙なものを見た。

人混みの中に、黒いモヤのような影が立っている。

最初は気のせいかと思った。

しかし、影は電車が到着すると、すっと誰かの体に吸い込まれていった。

「……何だ、今の?」

それからというもの、街のいたるところで、黒い影が見えるようになった。

エレベーターの隅、学校の校庭、公園のベンチ――

彼らは、ただじっと立っている。

だが、メガネを外すと見えなくなる。

第三章:影の正体

数日後、俺は思い切って骨董品屋に戻った。

だが、驚いたことに、店はもぬけの殻だった。

シャッターは閉まり、貼り紙には「閉店しました」の文字。

たった数日前に営業していたはずなのに?

「おかしい……。」

帰宅後、メガネをかけたまま鏡を覗いた。

そして、俺は凍りついた。

俺の背後に、黒い影が立っていた。

しかも――

それは、俺と同じ顔をしていた。

第四章:メガネを外しても……

慌ててメガネを外した。

しかし、影は消えなかった。

まるで、俺の視界に焼き付いてしまった かのように。

もう、メガネがなくても見える。

そう、俺は「視えてしまう」人間になってしまったのだ。

そして気づく。

影は、日に日に俺の体に近づいている。

もしかすると、あの影は俺自身なのではないか?

やがて影が俺に完全に重なったとき――

俺は、消えるのかもしれない。



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