怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

公園に一人でいると 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

その日、仕事が早く終わり、帰り道の途中にある小さな公園に立ち寄った。

夜の公園は、昼間とはまるで違う雰囲気になる。

街灯に照らされたブランコがぎぃ……ぎぃ……と風に揺れ、人気のない滑り台が、妙に寂しげに見えた。

ベンチに座り、ぼんやりと夜空を眺める。

「たまにはこういう時間もいいな……。」

しかし――

ふと気づくと、公園の隅に“誰か”が立っていた。

【奇妙な人影】

最初は、ただの通行人かと思った。

だが、その人影はまったく動かない。

薄暗い街灯の下で、じっとこちらを見ている気がする。

「……誰かいるのか?」

そう思いながら目を凝らすと、ゾッとした。

顔が、ない。

いや、顔の輪郭はある。

しかし、目も鼻も口も、何もない。

ただの“のっぺりとした肌色の表面”が、こちらを向いていた。

【増えていく人影】

背筋が凍り、立ち上がろうとした瞬間――

別の場所にも、同じ人影が現れていた。

公園の入り口、ジャングルジムの横、砂場の端……

いつの間にか、複数の“顔のない人”が、公園のあちこちに立っていた。

そして、全員が微動だにせず、こちらを向いている。

「……やばい。」

本能的に逃げなければならないと悟った。

しかし――

足が動かない。

まるで何かに縛られているように、身体が硬直してしまった。

その間にも、“顔のない人たち”は、少しずつ近づいてくる。

【逃げ場のない公園】

心臓が異常なほど早く脈打つ。

「助けを呼ばなきゃ……!」

必死にスマホを取り出し、通話アプリを開こうとする。

しかし――

画面に映るのは、無数の顔のない人間だった。

「うわっ!!」

驚いてスマホを落とす。

拾おうとした瞬間、耳元で囁く声がした。

「ここにいるのは、一人だけじゃないよ。」

ゾクリと鳥肌が立つ。

「……嘘だ……。」

ゆっくりと、周囲を見回した。

公園は、静かだった。

さっきまでいた“顔のない人”たちは、すべて消えていた。

「……何だったんだ、今のは。」

冷や汗を拭いながら、公園を後にした。

【エピローグ】

次の日、会社の同僚に昨夜の出来事を話した。

すると、同僚は妙な顔をした。

「……お前さ、それ本当に昨日の話?」

「え?」

「その公園、去年から立ち入り禁止になってるんだぞ?」

「……嘘だろ?」

急いでスマホで調べると、その公園は1年前、ある事件があって閉鎖されたと書かれていた。

では、昨日の夜にいた“顔のない人たち”は……?

それ以来、公園の近くを通るたびに、視線を感じる。

もしあなたも、夜の公園で誰もいないはずなのに“誰か”の気配を感じたら――

振り向かないほうがいい。

もしかすると、そこには“顔のない何か”が、あなたを見ているかもしれないから。



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