目次
プロローグ
俺の地元には、「人間嫌いの家」 と呼ばれる場所があった。
山奥にポツンと建つ古びた一軒家で、住んでいた老人は生前、極度の人間嫌いだったらしい。
町の人間とは一切関わらず、誰かが近づこうものなら怒鳴りつけ、時には石を投げて追い払ったという。
「アイツは、人間が嫌いすぎて、人間じゃなくなったんだよ。」
そう囁かれていたその老人は、ある日突然、家の中でミイラのような状態で発見された。
そして、それ以来――
あの家に近づいた人間は、次第に「おかしく」なるらしい。
第一章:肝試しに行った友人
そんな噂を聞いて、俺の友人Aが肝試しに行くと言い出した。
「そんなの迷信だろ? 俺が証明してやるよ。」
夜中の2時、Aは懐中電灯とスマホを持って、一人で「人間嫌いの家」 へ向かった。
そして、翌朝――
Aは無事に戻ってきた。
しかし、様子がおかしかった。
第二章:変わり始めたA
Aはその日以来、異常なまでに人を避けるようになった。
以前は社交的な性格だったのに、急に口数が減り、目を合わせなくなった。
俺が声をかけても、うつむいたまま返事をしない。
「……A、お前、なんかあったのか?」
するとAは、ボソッと呟いた。
「人間が、嫌いになった。」
その言葉を聞いた瞬間、全身に寒気が走った。
Aの声は、まるで別人のようだった。
第三章:Aの異変
それから数日後、Aは学校に来なくなった。
心配になった俺は、Aの家を訪ねた。
ドアをノックすると、ギィ……とゆっくり開いた。
家の中は異様なほど暗く、カーテンもすべて閉められている。
「A? お前、大丈夫か?」
返事はない。
恐る恐る奥へ進むと、Aが部屋の隅に体育座りしていた。
そして――
Aの顔を見た瞬間、俺は息を呑んだ。
Aの目には、光がなかった。
まるで、人間の感情がすべて抜け落ちたような目 をしていた。
「おい、A、しっかりしろよ!」
俺が肩を掴むと、Aはゆっくりと顔を上げ、笑った。
だが、その笑顔は明らかに「人間のもの」ではなかった。
「もう、俺……人間じゃないんだよ。」
第四章:消えたA
その翌日、Aは姿を消した。
家族の話では、夜中に突然家を出て行ったまま帰ってこない らしい。
捜索願が出されたが、Aの行方は杳として知れなかった。
そして――
Aが最後に送ったメッセージが、俺のスマホに残っていた。
「お前もすぐにわかるよ。人間なんて、もう嫌だろ?」
俺は、それを見た瞬間、Aの顔が頭に浮かんだ。
あの、「人間じゃないもの」になってしまったAの顔が。
結末:人間嫌いの家にいたもの
Aが消えてから数週間後、俺はどうしても「人間嫌いの家」を見に行きたくなった。
夜中、車で山道を走り、ボロボロの廃屋の前に立つ。
懐中電灯を照らしながら、そっと窓の隙間から中を覗いた。
そして――
そこにいたものを見て、息が止まった。
Aがいた。
いや、Aではない。
Aに「なってしまった何か」 が、暗闇の中に佇んでいた。
Aは、ゆっくりと俺のほうを向いた。
その顔は、まるで皮膚だけを残した抜け殻のようで――
目だけが、異常に黒く沈んでいた。
そして、歪んだ笑顔でこう言った。
「お前もこっちに来いよ。人間、やめようぜ。」
俺は一目散に車に飛び乗り、その場を離れた。
後ろを振り向くと、Aはじっとこちらを見つめ続けていた。
あの家に行った人間は、本当に「人間」ではなくなる のかもしれない。
もう二度と、近づくつもりはない。
だが、ひとつだけ確信していることがある。
それは――
Aはまだ、あの家にいる。
そして、新しい「仲間」を待っている。
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