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霊山・黒森――決して登ってはいけない山 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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黒森という霊山

「黒森(くろもり)」という山をご存じだろうか。

地図には載っていないが、古くから地元の人々の間では「決して登ってはいけない山」として知られている。場所は東北地方の某県。山自体は標高800メートルほどの小さなものだが、近隣の村では昔から奇妙な言い伝えがあった。

「黒森に入った者は、同じ姿で帰ってこない」

これは単なる迷信ではない。実際に黒森に足を踏み入れた登山者が、行方不明になったり、戻ってきても様子がおかしくなるという事例が過去に何度も記録されている。

霊山に挑んだ登山者たち

3年前、都市伝説を検証するためのYouTuberグループ「X探検隊」が黒森に入った。

彼らは事前に地元の住民から忠告を受けていた。

「黒森はやめとけ。お前らみたいな若い奴らが面白半分で行くような場所じゃない」

だが彼らは笑って取り合わず、意気揚々と黒森の登山道へと足を踏み入れた。

そして、彼らは二度と戻ってこなかった。

いや、正確には「一人だけ戻ってきた」のだが……。

帰ってきた者

登山から3日後、行方不明になったはずのメンバーの一人・田村が山のふもとで発見された。

発見当時、彼は泥まみれでぼんやりと座り込んでいた。通報を受けた警察が駆けつけると、彼はうわごとのようにこう呟いた。

「……あいつら、違う……」

警察の事情聴取でも田村は混乱しており、何を聞いても「山が……山が……」と繰り返すばかりだった。結局、彼の証言は意味を成さず、他のメンバーは行方不明のままだった。

しかし、奇妙なことに田村の家族や友人は、彼に対して違和感を抱いていた。

「田村は確かに田村なんだけど……何かが違う」

仕草、話し方、食の好み、記憶の細かい部分が、以前と少しずつズレているのだという。そして、彼は家族と過ごすうちに次第に無口になり、ついにはある日忽然と姿を消した。

そして、その後の彼の消息は誰も知らない――。

黒森の異変

田村が消えてからしばらくして、地元の住民たちは黒森に異変が起きていることに気づいた。

山の形が、変わっている。

登山道の入り口が以前よりも奥まっている。木々の並びが妙に違う。地元の年配者たちが「黒森は生きている」と口をそろえて言い出した。

「あの山は ‘人を取り込んで’ 成長するんだ」

田村は、黒森に吸収されたのか?
そして、彼と共に消えた他のメンバーたちは――?

現在でも、黒森は地図に載ることはない。

しかし、東北地方を訪れた際に、ふと地元の古い山道に「黒森入口」と書かれた朽ちかけた看板を見つけたなら……決して足を踏み入れてはいけない。



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