目次
【プロローグ】
「黒神岳(くろかみだけ)って知ってるか?」
登山が趣味の友人 斉藤 が、ある日そんな話を持ちかけてきた。
「……聞いたことないな。」
「地図にも載ってない山らしい。だけど、地元の登山仲間の間では“霊山”として有名らしいんだ。」
「霊山?」
「登った者の何割かが“帰ってこない”って話だよ。」
正直、オカルトは信じていない。
だが、斉藤の表情は冗談ではなかった。
「興味あるなら、一緒に行かないか?」
こうして、俺は黒神岳へ向かうことになった。
【黒神岳への道】
黒神岳の登山口は、某県の奥深い山間にあった。
「正式なルートはないらしい。地元の人間に道を聞かないと辿り着けないんだと。」
地元の集落で年配の男性に道を尋ねると、異様なほど険しい顔をされた。
「……やめときなさい。あそこは、“人”が入っていい山じゃない。」
そう言われても、斉藤は意に介さなかった。
「大丈夫です。自己責任で登ります。」
しかし、その老人は一言だけ、低い声でこう言った。
「山の中で、“赤い布”を見たら、決して近づくな。」
【霊山の気配】
登山を開始して数時間。
道なき道を進み、霧が立ち込める山中へと入った。
「……なんか、変だな。」
「うん、妙に静かだ。」
鳥の声も、虫の音も聞こえない。
まるでこの山だけが別の空間になっているようだった。
しばらく進むと――
木々の間に、“赤い布”が結ばれているのが見えた。
「……あれか?」
俺たちは足を止めた。
木の枝に、何枚もの赤い布が結ばれている。
まるで誰かの目印のようだった。
だが、何のために?
その時――
「うわっ!!」
突然、斉藤がバランスを崩し、倒れ込んだ。
「大丈夫か!?」
駆け寄ると、彼の足元には無数の小さな手形がついた黒い土が広がっていた。
「……これ、子供の手?」
不気味に思いながら、ふと赤い布の向こうを見ると――
そこには、黒い影のようなものが、じっと立っていた。
【消えた友人】
影は、一瞬のうちに霧の中へ消えた。
「……やっぱり、戻ろう。」
だが、斉藤は興奮したように言った。
「何言ってんだよ! もう少し進もうぜ!」
結局、俺は嫌な予感を抱えながらも、彼についていくことにした。
しばらく歩くと、視界が急に開けた。
目の前には、朽ち果てた祠があった。
そして、その周囲には無数の赤い布が吊るされていた。
「……ここ、やばくないか?」
「すげぇ……写真撮っとこうぜ!」
斉藤がスマホを構えた、その瞬間――
「しく……しく……」
どこからともなく、女のすすり泣く声が聞こえてきた。
「……誰かいるのか?」
返事はない。
だが、祠の奥から、何かが這い出てくる音がした。
「……っ!!」
俺は叫んだ。
「逃げろ!!」
だが、斉藤は動かなかった。
その目は虚ろで、まるで何かに取り憑かれたように、祠の奥へと歩いていく。
「おい、待て!!」
俺が叫ぶ間に、彼の姿は霧の中へ消えた。
【エピローグ】
俺は必死に山を下りた。
斉藤を探す余裕はなかった。
あの祠にいた"何か"を、直感的に感じ取ってしまったからだ。
地元の集落に戻り、すぐに警察へ連絡した。
しかし、捜索隊が山へ入るも――
斉藤は見つからなかった。
それどころか、警察が言うには黒神岳という山自体が存在しないのだという。
そんなはずはない。
俺たちは確かに登った。
しかし、地図を見ても、その場所には何も記されていなかった。
それ以来、斉藤の行方は不明のままだ。
ただ――
登山仲間の間で、奇妙な話を聞いた。
「黒神岳のこと、まだ覚えてるか?」
「……どういう意味だ?」
「最近な、別の登山者が黒神岳に迷い込んだらしいんだ。」
「……!」
「そいつが山中で見たんだと。祠の前に立っている、斉藤にそっくりな男の姿を。」
もし、あなたが地図に載っていない山を見つけたら――
決して、登ってはいけない。
そこは、この世界のものではないかもしれないから。
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