怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

パスワードとお札 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

ある日、俺のもとに一通のメールが届いた。

件名:「あなたのパスワードが見つかりました」

差出人は不明。

「……は?」

不審に思いながらも、本文を開く。

そこには、ただ一行、こう書かれていた。

《あなたの家のパスワードは、すでに解除されています》

意味がわからない。

「家の……パスワード?」

考えたが、思い当たるものはない。

だが、これが"警告"だったと気づくのは、その夜のことだった。

【異変の始まり】

夜、家に帰ると、玄関のドアが半開きになっていた。

「……鍵、閉め忘れたか?」

慎重に中へ入るが、特に荒らされた形跡はない。

一応、部屋中を確認する。

寝室、風呂場、クローゼット……異常なし。

だが、一箇所だけおかしな場所があった。

仏間に、お札が貼られていた。

【仏間のお札】

「……え?」

仏間の扉に、見たことのないお札が何枚も貼られていた。

古びた紙に、黒い墨で書かれた不気味な文字。

「誰が、こんなものを……?」

それに、俺はここに住んで5年になるが、仏間にお札なんて貼った覚えはない。

「まさか、誰かが勝手に?」

そう思った瞬間――

バタンッ!

仏間の扉が、勝手に閉まった。

【パスワードの意味】
ゾッとしながらも、扉を開けようとした。

しかし――

開かない。

鍵がかかっているわけでもないのに、何かが押さえつけているような感触だった。

その時、スマホが震えた。

差出人不明のメール。

《仏間には入るな》

「……っ!」

訳が分からず、その場から逃げ出した。

【お札が増えていく】

次の日、仕事を終えて帰宅すると、さらに異変が起きていた。

玄関、寝室、リビング、風呂場――

家中の扉という扉に、お札が貼られていた。

しかも、昨夜見たものよりも新しい。

「……誰が、こんなことを?」

そして、ふと気づいた。

お札には、俺の名前が書かれている。

「……なに、これ。」

次の瞬間、スマホが震えた。

差出人不明のメール。

《家のパスワードは、もう変更できません》

「パスワード……?」

ようやく理解した。

これは――

“この家に閉じ込めるための鍵”だったんだ。

【最後のメッセージ】

足元から、冷たい風が吹き抜けた。

「……出なきゃ。」

だが、玄関のドアに手をかけた瞬間――

ズズズ……

背後の仏間の扉が、ゆっくりと開いた。

中を覗くと、無数の黒い手が這い出してくるのが見えた。

そして――

「パスワード、解除完了」

耳元で、そう囁かれた。

【エピローグ】

俺が目を覚ましたのは、見知らぬ病室だった。

どうやら、隣人が異変に気づき、通報してくれたらしい。

警察の話では、俺は自分の家で意識を失っていたという。

「……お札、まだありましたか?」

恐る恐る聞くと、警察は首を振った。

「いや、あなたの家にお札はなかったよ。お札なんて、どこにもなかった。」

だが――

スマホのメールフォルダには、最後のメッセージが残っていた。

《仏間は解除しました。次は、あなたの番です。》

俺は、もうこの家には戻らない。

だがもし、あなたの家に不審なメールが届いたら――

それは、"何か"が家のパスワードを解除しようとしているサインかもしれない。



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