目次
【プロローグ】
大学時代の友人、坂本から連絡が来たのは、久しぶりのことだった。
「ちょっと、相談があるんだけど……。」
久しぶりに会った坂本は、異様にやつれていた。
目の下にはクマができ、頬はこけ、動きもぎこちない。
「どうした? 何かあったのか?」
坂本はおどおどしながら、小声でこう言った。
「俺、呪われてるかもしれないんだ。」
【怨霊に取り憑かれた友人】
坂本の話は、こうだった。
一ヶ月ほど前、仕事で地方の古い屋敷を訪れた。
その屋敷は長年空き家で、地元では「祟られた家」と噂されていたという。
「俺、あんまりそういうの信じないんだけどさ……。」
屋敷の調査をしていたとき、古びた襖に『怨霊退散』と書かれた札が何枚も貼られているのを見つけたらしい。
「で、何を思ったか、それを一枚剥がしちゃったんだよ。」
坂本がそう言った瞬間、部屋の温度が一気に下がったような気がした。
【始まった怪異】
「その日から、おかしなことが続くようになった。」
夜になると、寝室の隅に黒い影が立っている。
耳元で「かえせ……」という声が聞こえる。
誰もいないはずの部屋で、背後に気配を感じる。
そして、極めつけは――
剥がした札を持ち帰った翌日、部屋の壁に『怨霊退散』と赤黒い字が浮かび上がっていた。
「これ、どうすればいいんだよ……。」
坂本はそう言って、震えていた。
【怨霊退散の儀式】
「それ、ちゃんと元の場所に戻したほうがいいんじゃないか?」
俺がそう言うと、坂本は顔を青ざめた。
「……戻そうと思ったんだよ。でも……もう、戻せないんだ。」
「どういうことだ?」
坂本はスマホを取り出し、写真を見せた。
そこには、ボロボロになって燃え尽きた『怨霊退散』の札が写っていた。
「俺が戻そうとしたら、急に燃え上がったんだよ……!」
――怨霊を封じる札を、勝手に剥がしてしまった。
しかも、それを戻すこともできない。
「……どうすればいい?」
坂本の目は、泣きそうだった。
【儀式の失敗】
「お祓いを受けよう。」
知り合いの霊能者に相談し、怨霊退散の儀式を行うことになった。
霊能者のもとへ行くと、厳かにお経が唱えられ、部屋の四隅に塩が撒かれた。
「怨霊は、おそらくお札に封じられていたもの。あなたが剥がしたことで自由になった。」
「お札が燃えた今、新たに封じ込めるしかない。」
霊能者はそう言い、新しい札を坂本の体に貼った。
すると、その瞬間――
バン!!
電気が一斉に消え、室内が暗闇に包まれた。
「まずい……!」
霊能者の声が震えた。
「……封じ込めるのが、間に合わなかった……!」
【消えた坂本】
翌日。
坂本のアパートを訪ねたが、彼の姿はなかった。
ドアは施錠され、部屋の中は荒れ果てていた。
壁には、無数の「怨霊退散」の文字が書かれている。
だが、坂本自身はどこにもいなかった。
まるで、最初から存在していなかったかのように。
警察に連絡しても、「そんな人物は記録にない」と言われた。
……坂本は、本当にこの世に存在していたのか?
そう思ってしまうほど、何の痕跡も残っていなかった。
ただ、一つだけ。
坂本の部屋の押し入れの中に、古びた木札が落ちていた。
そこには、赤黒い文字でこう書かれていた。
「怨霊退散」
俺は、それを決して拾わず、そっと部屋を後にした。
【エピローグ】
その後、坂本の姿を見た者はいない。
彼のSNSは削除された。
だが、一つだけ気になることがある。
最近、俺の家の玄関に「怨霊退散」と書かれた札が貼られていた。
俺は、それを絶対に剥がさない。
もしあなたの家にも「怨霊退散」の札が貼られていたら――
決して、触れてはいけない。
それは、何かを封じるためにあるのだから。
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