目次
時間が進まない部屋
社会人2年目の佐藤は、新しく借りたワンルームの部屋に満足していた。
駅近で家賃も手頃、内装もシンプルで清潔感がある。
だが、奇妙な違和感を覚えるようになった。
「時間が全然進んでいない気がする……」
仕事が終わって帰宅すると、時計の針がほとんど進まない。
スマホで確認すると、時間は確かに進んでいるのに、体感的に異様に遅く感じるのだ。
読書をしても、映画を観ても、何時間も経ったように思えるが、実際には30分ほどしか経っていない。
「おかしいな……」
最初は疲れのせいかと思ったが、それにしても違和感が強すぎる。
会社とのズレ
数週間経つと、会社での時間の流れと自宅のそれが、明らかに違うことに気づいた。
会社では時間が普通に流れる。
だが、家に帰ると1時間が3時間、4時間にも感じられる。
不気味に思いながらも、時間がたつのが遅いのは悪いことではない。
むしろ、読書や趣味に没頭できる時間が増えている気さえした。
「もしかして、この部屋って最高なんじゃ?」
そう思いかけたが——ある夜、決定的な出来事が起こった。
眠れない夜
その日は休日だった。
一日中、部屋でのんびりしていた佐藤は、夜になっても全然眠くならなかった。
時計を見ると深夜1時。
「そろそろ寝るか……」
布団に入り、スマホで時間を確認しながら目を閉じた。
しかし、どれだけ待っても眠気がこない。
1時間たった気がしてスマホを見ると、まだ1時5分。
「え……?」
再び目を閉じ、次はひたすら目をつぶったまま時間が過ぎるのを待った。
感覚的には2時間、いや3時間は経ったはず。
スマホの画面を開く。
1時10分。
「……嘘だろ?」
この部屋では、体感時間と現実の時間が完全にズレている。
もしかして、自分だけこの部屋の時間に閉じ込められているのでは?
急激な恐怖に襲われ、佐藤はスマホを掴んで部屋を飛び出した。
時間が元に戻る
外に出ると、街の時間は普通に流れていた。
コンビニのレジ、車の動き、通りを歩く人々——すべてが普通だった。
ホッとした佐藤は、そのままカフェに入り、1時間ほど時間をつぶしてから部屋に戻った。
すると、今度は時間の流れが正常になっていた。
「……なんだったんだ?」
それからというもの、佐藤は1日に1回は必ず部屋の外に出るようにした。
それだけで、時間の感覚は正常に戻るのだ。
ただひとつ気になるのは——
この部屋の前に住んでいた人が、なぜ引っ越したのか、ということだった。
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