目次
友達が突然いなくなった
ある日、俺の親友の田中がいなくなった。
中学時代からの付き合いで、毎日のように遊んでいた。
高校に進学してからも仲が良く、放課後にファミレスでだべったり、ゲームをしたりしていた。
それなのに——ある朝、田中の存在が消えていた。
学校に行くと、クラスの誰もがこう言った。
「田中? 誰それ?」
担任の先生に聞いても、田中のことなど知らないと言う。
名簿を確認すると、田中の名前はどこにもなかった。
俺は冗談かと思った。
だが、スマホを開くと、田中とのLINEのやり取りが全部消えていた。
写真フォルダを見ても、田中と一緒に写った写真は一枚もなかった。
まるで——最初から田中という人間が存在しなかったかのように。
記憶だけが残っている
しかし、俺の頭の中には田中と過ごした記憶がはっきりと残っている。
・中学の時、一緒に夏祭りに行ったこと。
・高校の入学式の日に「この制服ダサくね?」って笑ったこと。
・ゲームで夜更かしして、翌日寝坊したこと。
俺は混乱しながら家に帰った。
田中の家を訪ねようとしたが、そこであることに気づいた。
——田中の家がない。
いや、正確には、田中の家があった場所が、更地になっていた。
ポカンと立ち尽くしていると、近所のおばさんに声をかけられた。
「どうしたの?」
俺は震えながら聞いた。
「ここに住んでた田中って……どこに行ったんですか?」
すると、おばさんは怪訝な顔をしてこう言った。
「ここ、ずっと空き地だよ? 誰も住んでなかったわよ」
俺は頭が真っ白になった。
田中を知っている人
もうダメかと思ったその時——1人だけ、田中のことを覚えている人がいた。
中学の時のクラスメイトの斉藤だ。
俺は慌てて斉藤に連絡した。
「田中が……田中が消えたんだ!!」
斉藤はしばらく黙っていた。
そして、ぽつりとこう言った。
「……やっぱり、お前のところもか」
「え?」
「実は、俺も最近、別の友達が突然いなくなったんだ。
みんな、その友達のことを知らないって言う。
写真も、LINEも全部消えてた」
心臓がドクンと跳ねた。
「じゃあ……田中も?」
「わからない。でもさ、俺、気づいたことがあるんだ。」
「何を?」
「消えたやつの記憶がある人間は、次に消える。」
俺は言葉を失った。
もしそれが本当なら、次に消えるのは——俺、なのか?
俺はまだここにいるか?
それから、俺は田中のことを誰にも話さなくなった。
斉藤とも、二度と連絡を取らなくなった。
ただ、最近になって気づいたことがある。
俺のスマホの連絡先の中に、知らない名前が一つ増えていた。
LINEのトーク履歴を開くと、メッセージが一件だけ残っていた。
「忘れないでくれて、ありがとう」
送信者の名前は、田中だった。
俺は今もここにいる。
だが、いつか俺も誰かの記憶から消えてしまうのだろうか。
その時、本当に怖いのは——
俺が消えたことに、誰も気づかないことなのかもしれない。
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