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かくれんぼの名人──見つからなかった少年の話 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──奇妙な記録

都内の大学で民俗学を研究している「村上翔」は、ある日、古い新聞記事を見つけた。

『昭和22年、少年がかくれんぼ中に行方不明。数十年後、姿を現す』

記事を読むと、当時10歳の少年が友人とかくれんぼをしている最中に忽然と姿を消し、数十年後に「当時の姿のまま」戻ってきたというのだ。

「これは……作り話か?」

興味を持った翔は、詳しく調べることにした。

第一章──少年の失踪

翔は記事に書かれていた町を訪れ、地元の図書館で当時の資料を探した。

すると、実際に「神谷直樹」という少年が1947年に行方不明になり、その後1992年に突如戻ってきたという記録があった。

しかし、不思議なことに、戻ってきた直樹の姿は10歳のままだったという。

村の住人は困惑し、警察も調査したが、直樹は自分が「ずっと隠れていた」としか言わなかったらしい。

「数十年も隠れていた? そんなこと、あり得るのか?」

翔は、唯一生存している直樹の幼なじみ「坂本和夫」という老人に話を聞くことにした。

第二章──直樹がいた場所

和夫は90歳近くになっていたが、記憶ははっきりしていた。

「直樹とはよく一緒に遊んだよ。でも、あの日のかくれんぼが最後だった……」

和夫によると、直樹が最後に隠れたのは「村の神社の裏手」にある小さな祠(ほこら)だったという。

「何度も呼んだのに、どこにもいなかった。あれは本当に不思議だったな」

「でも、直樹さんは戻ってきたんですよね?」

翔が尋ねると、和夫は苦笑した。

「ああ……戻ってきた。でも、彼は……何も変わっていなかった」

和夫によると、1992年、突如として直樹が祠の近くで発見された。

服も顔も当時のまま。本人も、「かくれんぼの途中だったのに、どうして急にみんなが大人になってるの?」と困惑していたという。

まるで、彼だけが時間の流れから取り残されていたかのように。

第三章──祠の秘密

翔は、問題の祠を訪れることにした。

神社の裏手に回ると、古びた小さな祠がぽつんと立っていた。

「ここか……」

近づくと、祠の扉には「かくれんぼ禁止」と書かれた古い木札が掛かっていた。

「最初からこんな注意書きがあったのなら、直樹少年も……」

そう思った瞬間、背後から小さな声が聞こえた。

「もう、いいかい?」

翔は驚いて振り向いた。

しかし、そこには誰もいなかった。

風が吹き、祠の扉がわずかに開いた。

翔はそっと中を覗いた──

そこには、まだ誰かが隠れているような気配があった。

彼は、そっと扉を閉め、黙ってその場を後にした。

かくれんぼは、まだ終わっていなかったのかもしれない。



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