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友達が消えた話──気づいた時には存在しなかった 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──あるはずのない記憶

大学生の「宮本涼介」は、ふとした瞬間に違和感を覚えた。

友人との思い出を振り返っていると、どうしても名前が思い出せない人物がいるのだ。

──小学校の頃、いつも一緒に遊んでいた友達。
──中学でもよくつるんでいたはずの親友。

だが、いくら考えても、その友達の名前も顔も思い出せない。

「そんなバカな……」

涼介は慌てて卒業アルバムを開いた。

しかし、そこに「その友達」は載っていなかった。

確かにいたはずなのに。

第一章──消えるまでの経緯

違和感を抱えながらも、涼介はその「友達」との思い出を必死にたどった。

断片的な記憶が蘇る。

・小学校の放課後、一緒に秘密基地を作ったこと。
・中学の夏休み、二人で肝試しをしたこと。
・高校の時、進路のことで真剣に語り合ったこと。

しかし、決定的におかしいことがあった。

──どの思い出にも、「他の友人がその友達の存在を認識していない」のだ。

小学校の秘密基地を作ったとき、他の友人たちの記憶では「涼介が一人で作っていた」ことになっていた。

中学の肝試しの話をしても、みんな「そんなことあったっけ?」と首をかしげる。

そして、高校時代の進路相談の記憶も、涼介が「独り言を言っていた」としか思われていなかった。

「おかしい……本当に、おかしい……」

第二章──最後の思い出

涼介は、大学の友人にその話をした。

「俺、小中高ずっと一緒だった親友がいたはずなんだけど、誰も覚えてないんだよ」

「いやいや、記憶違いじゃないの?」

「違うんだ……だって、最後に会った日のことを覚えてる」

大学に入る直前の春休み。

その友達と二人で、地元の公園のベンチに座っていた。

桜が舞う中、他愛のない話をしていたが、ふと友達がこんなことを言った。

「なぁ、お前ってさ……俺のこと、本当に覚えてる?」

「何言ってんだよ、当たり前だろ?」

「そっか。なら、もうちょっとだけ……大丈夫かな」

その言葉の意味が分からず、涼介は苦笑いしただけだった。

──そして、その日を境に、彼の記憶からその友達が「消えた」のだ。

第三章──存在しなかった友達

涼介は意を決して、実家に戻り、過去の写真をすべて調べた。

しかし、どこを探しても、その友達が写っている写真は一枚もなかった。

「そんなはず、ない……!」

昔のLINEやメールの履歴も探したが、何も残っていない。

まるで、最初からその友達が「存在していなかった」かのように。

そして、最後の望みをかけて、小学校時代の日記を開いた。

そこには、彼の名前が書かれていた。

『今日も○○と一緒に遊んだ』

やはり、確かに存在していた……はずだった。

しかし、よく見ると、その名前の部分だけが滲んでいて読めない。

まるで、何かが「意図的に」消したかのように。

その瞬間、涼介の背筋に寒気が走った。

──もしかして、俺も忘れなきゃいけないんじゃないか?

まるで、このまま思い出し続けたら「何かが起こる」気がした。

恐怖に駆られた涼介は、日記をそっと閉じた。

もう、思い出さない方がいい。

もう、気づかない方がいい。

──彼が消えた理由を思い出さない方がいい。



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