目次
吹雪の山小屋
俺は大学の山岳部に所属している。冬山登山が好きで、毎年雪山に挑戦していた。
今年も部の仲間と一緒に山に登る予定だったが、直前で急な仕事が入り、俺だけ後から合流することになった。
冬山は危険なので、山頂近くの 避難小屋 でみんなと落ち合う約束をしていた。
「吹雪になりそうだから、無理せず気をつけて来いよ。」
仲間の言葉を思い出しながら、俺はひとり雪の山道を登っていた。
誰かがいる?
しばらくすると、天気が急変し、視界がほとんどなくなるほどの 猛吹雪 になった。
「…マズいな。」
このままでは遭難するかもしれない。
なんとか避難小屋までたどり着こうと焦っていたその時——
「……助けて……」
かすかに、誰かの声が聞こえた。
「…え?」
あたりを見回しても、人の姿はない。
「……ここにいる……」
雪の向こう、白い影がゆらりと揺れた気がした。
「遭難者か!?」
俺は声のする方へ向かった。
もう使われていない山小屋
雪に足を取られながら進むと、視界の先に 古い山小屋 が現れた。
俺たちが合流する予定の避難小屋とは違う。
もっと古く、壁は朽ち果て、窓ガラスは割れていた。
「…こんな場所、地図にはなかったはずだが…」
しかし、吹雪の中で立ち止まるのは危険だ。
俺は意を決して扉を押し開けた。
消えた登山者の記録
中は意外と整っていた。
テーブルの上にはランプがあり、古いストーブが置かれている。
そして、隅にある木箱の上に 一冊の登山ノート があった。
俺はそのノートを手に取り、ページをめくった。
「昭和48年 12月15日 吹雪で動けず、小屋に避難する。」
「12月16日 誰かの声がする。外に出たが、誰もいない。」
「12月17日 朝起きると、小屋の中に“誰か”が立っていた。」
俺は息を呑んだ。
さらにページをめくると、最後にこう書かれていた。
「12月18日 もうすぐ迎えが来る。もう逃げられない。」
そこで文章は途切れていた。
「……迎え?」
不気味に思いながらノートを戻し、部屋を見回す。
その時、何かが視界の端で動いた気がした。
窓の外に、人影があった。
白い顔の登山者
「誰かいるのか!?」
窓に近づき、外を覗いた。
そこには——
白い顔をした登山者が立っていた。
無表情で、じっとこちらを見ている。
「…っ!」
慌てて扉を開けて外に出るが、そこには 誰もいなかった。
ただ、遠くで微かに 「助けて……」 という声が聞こえた。
その瞬間、俺の背筋に冷たいものが走った。
このノートの持ち主も、きっと この声に誘われたのではないか?
そう思うと、無性に怖くなり、俺は山小屋を飛び出した。
そして、また
なんとか本来の避難小屋にたどり着き、仲間と合流できた。
俺はすぐに あの山小屋 のことを話した。
すると——
「お前、何言ってんだ?」
「そこ、10年以上前に崩れて、もう跡形もないはずだぞ。」
「……嘘だろ?」
確かに俺は、あの山小屋でノートを読んだ。
そして、窓の外には 白い顔の登山者 がいた。
でも、その小屋は もう存在しない。
では、俺が避難したあの場所は 一体なんだったのか?
あの時聞こえた声は?
そして——
「もうすぐ迎えが来る」とは、どういう意味だったのか?
今でも、雪が降ると あの声を思い出す。
そして、ふと考えてしまう。
もしあの時、もう少し長く小屋にいたら——
次に迎えられるのは、俺だったのかもしれない。
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