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電車を乗り過ごした先に──終点のない駅 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──終電を逃して

会社員の「高山翔太」は、その日も残業で終電ギリギリだった。

疲れた体を引きずりながら、何とか電車に乗り込む。座席に腰を下ろすと、強烈な眠気が襲ってきた。

「次は○○駅、○○駅です……」

アナウンスをぼんやり聞きながら、翔太の意識はゆっくりと沈んでいった。

第一章──知らない駅

「……お客さま、終点ですよ」

車掌の声で翔太は目を覚ました。

「あ、すみません……」

慌てて降りると、そこは見たことのない駅だった。

「え?」

終点なら知っているはずの○○駅ではない。看板には、聞いたこともない駅名が書かれていた。

駅の構造は古びており、人気がない。電光掲示板は消え、売店もシャッターが閉まっている。

ホームを見渡しても、他に乗客の姿はない。

「乗り過ごしたにしても、こんな駅、聞いたことがない……」

駅名をスマホで検索しようとするが、電波が入らない。

「とりあえず駅を出よう……」

そう思い改札に向かうと、改札機がないことに気づいた。

第二章──出口がない駅

改札の代わりに、古びた木製の扉がぽつんと立っていた。

「こんなの、今どきありえないだろ……」

恐る恐る扉を開けると、外は真っ暗だった。

駅の周囲には何もなく、街灯すらない。見えるのは、遠くにぼんやりと広がる霧だけ。

「タクシーでも拾えれば……」

そう思ってスマホを再び確認するが、電波は圏外のまま。

背後で、電車の発車音がした。

「待て!」

慌てて振り返るが、電車はすでにホームを離れ、ゆっくりと消えていく。

──次の電車が来るまで待つしかない。

翔太は仕方なく、ホームのベンチに腰を下ろした。

第三章──消えた時間

しばらくすると、駅のスピーカーからアナウンスが流れた。

「次の電車は、午前2時3分に到着します」

時計を見ると、今は午前2時ちょうど。

「あと3分か……」

しかし、そこからいくら待っても電車は来なかった。

5分……10分……30分……

「おかしいだろ……」

再び時計を確認する。

──午前2時ちょうど。

時間が進んでいない。

翔太はゾッとして、もう一度スマホを開いた。

画面には、ある異変が起きていた。

「2:00 AM」

まるで、この駅に来た瞬間から時間が止まっているようだった。

終章──帰れない駅

足音が聞こえた。

誰かが近づいてくる。

「すみません!」

翔太は助けを求めるように声を上げた。

しかし、そこにいたのは駅員ではなかった。

──自分とまったく同じ姿をした男だった。

男は静かに微笑み、こう言った。

「やっと気づいたね。ここは"終点のない駅"だよ」

翔太の意識が遠のく。

そして、目を覚ますと──彼は再びベンチに座っていた。

ホームには誰もいない。

スピーカーから、アナウンスが流れる。

「次の電車は、午前2時3分に到着します」

時計を見ると、午前2時ちょうどだった──。



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