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双眼鏡を覗いてはいけない──封じられた社の秘密 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──山奥の神社

大学生の「坂本雄大」は、サークルの友人と登山へ出かけた。

目的地は、地元の人すら近寄らないと言われる山。

「この山には、誰も行かない神社があるらしい」

そう言ったのは、オカルト好きの「高梨」だった。

調べてみると、確かに地図には載っていない神社があるらしい。

「面白そうじゃん、行ってみようぜ!」

軽い気持ちで山を登り始めたが、それが「見てはいけないもの」を見ることになるとは、その時は思いもしなかった。

第一章──双眼鏡で見えたもの

途中、視界の開けた場所に出た。

「お、いい景色じゃん!」

高梨はバッグから双眼鏡を取り出し、山の奥を覗き込む。

「おい、あったぞ!」

彼が指差す方向には、木々に埋もれるようにして、小さな社が建っていた。

しかし、その周囲には奇妙なものが見えた。

──社の周りに、無数の「紙垂(しで)」が張り巡らされている。

まるで、何かを「封じ込める」ように。

「なんか、ヤバそうな雰囲気だな……」

雄大は嫌な予感がしたが、好奇心旺盛な高梨が止まるわけがなかった。

「行こうぜ!」

そう言って、高梨は足早に社へ向かっていった。

第二章──社の中の異変

近づくと、社の扉にはびっしりと「お札」が貼られていた。

そして、鳥居の周囲には、ボロボロになった古い双眼鏡がいくつも落ちていた。

「……これ、ヤバくないか?」

しかし、高梨はためらいもせず、お札を剥がそうとした。

その瞬間──

「カチッ……」

彼の首が、不自然な角度に傾いた。

双眼鏡を覗いたまま、動かない。

「おい、高梨!? どうしたんだよ!」

雄大が声をかけると、彼はゆっくりと口を開いた。

「……見られた……」

その声は、高梨のものではなかった。

第三章──覗いたものの正体

「見られた? 何が?」

雄大がそう言った瞬間、高梨の手から双眼鏡が滑り落ちた。

反射的に拾い上げ、レンズを覗いた──その時。

視界の端に、何かが映った。

──社の中に、「何か」がいる。

それは、人の形をしていたが、顔がなかった。

代わりに、身体中についた無数の「目」が開いていた。

「お前も、見たな?」

雄大の手から、双眼鏡が弾かれた。

慌てて振り向くと、高梨の姿はどこにもなかった。

ただ、社の前に新しい「お札」が貼られているだけだった。

そして、そのお札には──

「双眼鏡で覗いた者を封じる」

そう書かれていた。

終章──もう一つの双眼鏡

雄大は必死で山を駆け下り、地元の住人に助けを求めた。

しかし、彼らは口を閉ざし、こう言った。

「二度とあの社に近づくな」

「双眼鏡を持っているなら、すぐに捨てろ」

そして、最後にこう付け加えた。

「見てしまった者は、いずれ迎えが来る」

それから数日後──

雄大の部屋のポストに、小さな荷物が届いた。

中には、あの日、山で拾ったはずの双眼鏡が入っていた。

そして、覗き込むと、そこには──

社の扉が、ゆっくりと開く光景が映っていた。



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