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雪かきの音が聞こえる──誰もいないはずの夜 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──降り積もる雪

冬の寒さが厳しい地方に住む「田村健一」は、今年も雪かきに追われていた。

深夜に降り積もった雪を朝一番で片付けなければ、道が塞がれてしまう。

「ったく……今年は例年以上に降るな」

手袋をはめ、スコップを手に取る。まだ薄暗い朝の町は静まり返っていた。

しかし、ふと気がついた。

「カリッ……カリッ……」

どこからか、雪かきをする音が聞こえてくる。

第一章──誰もいない雪道

近所の人かと思い、あたりを見渡した。

だが、誰もいない。

音はすぐ近くから聞こえてくるのに、どこにも人影がないのだ。

「……気のせいか?」

そう思い、作業を続ける。

しかし、しばらくすると、再び「カリッ……カリッ……」という音が背後で響いた。

まるで、誰かがすぐ後ろで雪をかいているかのように。

振り向くと──やはり誰もいない。

だが、その瞬間、田村は寒さとは別の理由で背筋が凍った。

スコップを持つ自分の手が、なぜか震えているのだ。

まるで、本能的に「ここにいてはいけない」と訴えかけるように。

第二章──音の正体

不気味に思いながらも、雪かきを続けた。

しかし、今度は別の異変に気づいた。

──雪の「かき方」が変わっている。

自分が綺麗に片付けたはずの道に、誰かが乱雑に雪を押し戻した跡がある。

「誰かイタズラしてんのか?」

辺りを見回すが、相変わらず人の気配はない。

それどころか、さっきまで聞こえていた雪かきの音が、ピタリと止んでいた。

まるで、自分が気づいたことを悟られたかのように──。

第三章──消えない音

「……さっさと終わらせて家に戻ろう」

田村はそう思い、急いで雪かきを再開した。

しかし、すぐにあることに気づく。

──スコップの先が、何か固いものに当たった。

「ん? 石でも埋まってんのか?」

そう思いながら雪を掘り返すと、そこに現れたのは……古びた木製のスコップだった。

「なんだ、これ……?」

スコップはひどく傷んでおり、まるで何年も前に使われていたかのようだった。

しかし、不思議なことに、雪の中にあったにもかかわらず、持ち手の部分はほんのり温かかった。

その瞬間、またあの音が響いた。

「カリッ……カリッ……」

今度は、すぐ耳元で──。

田村は反射的にスコップを投げ捨て、振り向いた。

しかし、そこにはやはり誰もいない。

ただ、冷たい空気の中に、確かに「何かの気配」があった。

まるで、誰かがそこに立ち、じっとこちらを見つめているかのように。

「……もういい……」

田村は雪かきを諦め、家の中へと駆け込んだ。

終章──鳴り続ける音

その夜、布団に入っても田村はなかなか眠れなかった。

昼間の出来事が頭を離れない。

──あのスコップは、一体誰のものだったのか?
──なぜ、あんなに温かかったのか?

そして、何より──

あの雪かきの音は、誰が出していたのか?

考えれば考えるほど、不安が募る。

「……明日になれば、気のせいだったと思えるだろう」

そう自分に言い聞かせ、無理やり目を閉じた。

しかし、深夜2時。

外から、また聞こえてきた。

「カリッ……カリッ……」

雪かきをする音が──確かに、家のすぐ外で鳴り続けていた。



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