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子どものようなものが来る──夜道で見た“それ” 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──奇妙な噂

大学生の山本翔太は、ある夜、サークルの仲間と話をしていた。

地元で有名な「夜に子どもが出る道」と呼ばれる細い裏道。

「あの道、深夜になると“子どものようなもの”が追いかけてくるって噂、知ってる?」

先輩が面白がって話すが、翔太は鼻で笑った。

「どうせ作り話だろ」

「いや、本当に“子どもみたいなやつ”が現れるんだって。ただし──絶対に振り返るなって言われてる」

「なんで?」

「振り返ると、そいつが“子どもじゃない”って分かるから……」

翔太はバカバカしいと思いながらも、その夜、一人でその道を通ることになった。

第一章──足音がついてくる

午前1時過ぎ。

仲間と別れた翔太は、問題の裏道を歩いていた。

道は狭く、両側には古びた塀が続いている。街灯はまばらで、足元さえよく見えないほど暗かった。

「ったく、くだらねえ噂だよな……」

そう呟いた瞬間──

「タタタ……」

背後で、小さな足音が聞こえた。

「……?」

子ども? こんな時間に?

振り返ろうとしたが、ふと先輩の言葉を思い出した。

──「絶対に振り返るな」

冗談だろ、と思いつつも、翔太はそのまま歩き続けた。

しかし、足音はだんだん近づいてくる。

「タタタタ……」

小さな裸足のような音が、すぐ背後まで迫っているのが分かる。

冷たい汗が背筋を伝った。

「……早く帰ろう」

歩く速度を速める。

すると──

足音も、それに合わせて速くなった。

第二章──見えない影

「……ついてくる……」

翔太は心臓がバクバクと鳴るのを感じながらも、必死で歩いた。

あと少しで道が開ける。

歩きながら考える、この足音は誰のものなんだ?

恐怖が全身を支配した。

「……走ろう」

そう思った瞬間、足音がピタリと止まった。

そして、耳元で小さな声がした。

「もう、いいかい?」

第三章──振り向いてはいけない

翔太は凍りついた。

子どもの声。

いや、それは“子どもみたいなもの”の声。

無意識に首が動きかける。

「ダメだ!!」

頭の中で警報が鳴るように、先輩の言葉がこだました。

──「振り返るな」

翔太は歯を食いしばり、全力で駆け出した。

ゴールはあと少し。

「走れ!! 走れ!!!」

だが、その瞬間。

ドスッ

何かが翔太の背中に飛びついた。

小さな手が、肩に絡みつく。

「みぃつけた……」

その声がした瞬間、翔太の視界が真っ暗になった。

終章──消えた夜

目を覚ますと、翔太は自分の部屋のベッドにいた。

「……夢?」

いや、違う。

腕には、小さな手の跡のような痣がくっきりと残っていた。

スマホを見ると、時刻は午前4時。

あの道で何があったのか、記憶が途切れている。

ただ、ひとつだけ分かることがある。

──あれは、“子ども”ではなかった。



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