怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

最後の晩餐──招かれざる客 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──奇妙な招待状

会社員の遠藤直人は、その日、仕事を終えて帰宅すると、ポストに黒い封筒が入っていることに気づいた。

差出人の名前はなく、表には金色の文字でこう書かれていた。

《ご招待状──特別な晩餐会へ》

身に覚えはなかったが、裏面を見ると、開催場所と日時が記されていた。

──明日の夜、19時。会場:ホテル○○ 10階特別室

「誰かのイタズラか?」

そう思いつつも、封筒の中には詳細な案内と、“参加は義務です”という一文が記されていた。

第一章──見知らぬ晩餐会

翌日、仕事を終えた直人は、好奇心に駆られて会場へ向かった。

ホテル○○の10階にある「特別室」は、思ったよりも豪華だった。

テーブルには美しい銀の食器が並べられ、すでに6人の参加者が席についていた。

どこかで見たことがある顔もあれば、まったく知らない人もいる。

しかし、皆一様に緊張した面持ちだった。

やがて、黒服の執事のような男が現れ、静かに告げた。

「皆様、お揃いになりましたね。本日は、『最後の晩餐』にご招待いたしました」

その言葉に、背筋が冷たくなるのを感じた。

第二章──消えていく客

晩餐が始まると、フレンチのコース料理が運ばれてきた。

どれも見たことのないほど美しい料理だったが、誰も手をつけようとしない。

すると、一人の男性が意を決したようにフォークを手に取った。

「いただきます」

そう言って一口食べた瞬間、彼の顔色が変わった。

「……うっ……」

彼は苦しそうに喉を押さえ、次の瞬間──その場から消えた。

まるで、存在そのものがなかったかのように。

「えっ……?」

参加者全員が凍りついた。

「な、何が起こったんだ……?」

誰もが理解できずにいる中、執事は静かに微笑んだ。

「どうぞ、ご自由にお召し上がりください」

第三章──自分の料理の意味

食べると消えるのか?

恐怖に駆られた直人は、ふと自分の皿を見た。

そこには、見覚えのある料理が載っていた。

母の作ってくれたハンバーグと同じ味の料理だった。

他の参加者の皿を覗くと、それぞれ違う料理が並んでいた。

まるで、一人一人の「記憶に残る最後の料理」のように。

「……これは、俺たちの“最後の晩餐”なのか?」

この料理を食べたら、自分も消えてしまうのかもしれない。

そう思った瞬間、隣の席の女性がそっとフォークを置いた。

「これ……私の子供の頃の誕生日ケーキだ……」

彼女は震えながら呟いた。

そして、次の瞬間──

彼女もまた、ふっと消えた。

終章──招かれた理由

残されたのは直人を含め、3人だけだった。

もう一人の男が叫ぶ。

「ふざけるな!! これは何のゲームなんだ!?」

しかし、執事は静かに告げるだけだった。

「皆様には、それぞれ“食べるべき理由”がございます」

その言葉の意味を考えた瞬間、直人の頭にある記憶が蘇った。

──数日前、彼は交通事故に遭い、意識を失ったことがあった。

「まさか……俺は、もう……」

視界の隅で、最後の参加者がそっとスプーンを口に運んだ。

彼は、静かに微笑みながら消えていった。

残ったのは、直人一人。

そして、執事が微笑んだ。

「お客様、お食事をどうぞ」

目の前には、懐かしいハンバーグが置かれていた。

直人はフォークを握った。

「……食べなければ、帰れるのか?」

「ご安心ください。皆様、ご自分の選択でお召し上がりになられました」

その言葉を聞いた瞬間、直人はフォークを投げ捨て、席を立った。

次の瞬間──視界がぐにゃりと歪んだ。

気づくと、彼は病院のベッドの上にいた。

「目を覚ましたんですね!」

医師が駆け寄る。

「あなたは事故で意識不明でした。もう戻れないかと……」

直人は、自分の手を見つめた。

生きている。

あれは、夢だったのか。



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