怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

白い部屋の夢──目覚めても終わらない閉鎖空間 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──繰り返す悪夢

会社員の片山涼は、最近奇妙な夢を見るようになった。

──真っ白な部屋に閉じ込められる夢。

床も壁も天井も、すべてが白。窓もなく、ドアもない。

何もないその部屋で、涼はただ呆然と立ち尽くす。

「ここはどこだ……?」

声を出しても反響すらない。ただ無音の世界が広がっている。

しかし、最も奇妙なのは──

「夢の続きを、毎晩見ている」ことだった。

第一章──現実との境界

最初はただの悪夢だと思っていた。

しかし、何日経っても夢の中の部屋は変わらず、むしろ「進行している」ようだった。

ある夜、夢の中の白い部屋に小さな「扉」が現れた。

「出口か……?」

涼は恐る恐る扉に手をかける。

しかし、その瞬間、背後で気配を感じた。

振り向くと、白い壁の中に、誰かの顔が浮かんでいた。

──じっと、こちらを見つめている。

涼は叫び声を上げ、そこで目を覚ました。

心臓が激しく鼓動を打つ。

しかし、もっと恐ろしいことに気づいた。

──目覚めても、部屋の片隅がほんの少し「白く」なっていた。

まるで、夢の世界が現実へ侵食しているかのように。

第二章──夢の部屋が増えていく

それからも、夢は続いた。

白い部屋の壁に、新たな扉がいくつも現れ始める。

しかし、どの扉も開けると同じ白い部屋につながっている。

まるで迷路のように。

そして、壁に埋もれていた「顔」が、日に日に増えていった。

ある時、涼は恐る恐るその顔の一つをじっくり見た。

「……っ!!」

それは、自分の顔だった。

第三章──現実が夢に侵食される

目を覚ますと、部屋の白い部分がさらに広がっていた。

「……おかしい」

違和感を抱きながら、会社に向かう。

しかし、オフィスに着いた瞬間、背筋が凍った。

──オフィスの壁にも、白い染みのようなものが広がっていた。

まるで、夢の世界が現実にまで入り込んでいるように。

そして、同僚の「高橋」が、心配そうに言った。

「片山、お前……最近ちょっと様子が変だぞ」

「え?」

「鏡、見てみろよ」

トイレの鏡に映った自分の顔を見て、涼は息を飲んだ。

──顔の一部が、白くなっている。

まるで、壁の中に埋もれた「顔」たちのように。

終章──最後の目覚め

その夜、涼はもう一度夢を見ることを決意した。

「このままだと、俺はこの部屋に飲み込まれる」

白い部屋の中で、彼は意を決して壁の顔に問いかけた。

「お前は……俺か?」

壁の顔はゆっくりと口を開いた。

「もうすぐ、お前も“こっち”に来るんだよ」

涼は慌てて扉を開け、どこまでも続く白い空間の中を走った。

しかし、どの扉を開けても、同じ白い部屋。

どこにも逃げ場はない。

「……目を覚ませ!!!」

そう叫んだ瞬間、涼は飛び起きた。

……自分の部屋だった。

だが、すべてが真っ白になっていた。

「……嘘だろ……?」

白くなった部屋の壁の中で、「いくつもの顔」が、にやりと笑った。



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