目次
序章：おまじない好きの友達
「ねえ、知ってる？ 図書室で“あのおまじない”をすると、不思議なことが起こるんだって！」
放課後、小学5年生の水瀬あかり（みなせ・あかり） は、親友の 藤井すみれ（ふじい・すみれ） に話しかけられた。
すみれはクラスで有名な おまじない好き で、いつも何かしらの占いや不思議な話を仕入れてくる。
「“あのおまじない”って？」
「“図書室の七不思議”のひとつ！ 知らないの？」
「七不思議なんてあったっけ……？」
学校の図書室は古く、大きな本棚が並んでいる。
すみれによれば、その中にある 「いないはずの誰かに本を借りてもらうおまじない」 というものがあるらしい。
《やり方》
放課後の図書室で、本を選ぶ。
貸し出しカードに、自分の名前を書かずに空白のまま 戻す。
次の日、カードを見ると、誰かの名前が書き込まれている——。
「つまり、“いないはずの誰か”が借りたことになるってこと？」
「そう！ ね、面白そうでしょ？」
「でも、先生に見つかったら怒られそう……。」
「大丈夫だって！ ね、一緒にやろうよ！」
あかりは少し不安だったが、すみれの好奇心に押され、一緒にやってみることにした。
第一章：図書室でのおまじない
放課後、2人は図書室へ向かった。
誰もいない静かな空間に、時計の音だけが響いている。
「どの本にする？」
「んー……これなんてどう？」
すみれが選んだのは、古びた民話集 だった。
「いいね。じゃあ、貸し出しカードを見てみよう。」
本の裏表紙に貼られた貸し出しカードを確認すると—— 誰の名前も書かれていなかった。
「これはちょうどいいかも！」
「じゃあ、名前を書かずに戻すね。」
あかりは、カードをそっと戻し、本棚に本を差し込んだ。
「……これで終わり？」
「うん！ 明日、確認すれば結果がわかるよ！」
少しのドキドキを抱えながら、2人はそのまま帰宅した。
第二章：誰が借りたの？
翌日、2人は授業が終わるとすぐに図書室へ向かった。
昨日の本を取り出し、貸し出しカードを確認すると——
そこには、見覚えのない名前が書かれていた。
《狐塚（きつねづか）》
「……こんな名前の人、いたっけ？」
すみれはクラスメイトの顔を思い浮かべたが、思い当たる人はいない。
「先生かな？」
「いや、先生の字じゃないよ……。」
書かれていたのは、小学生が書いたような丸みのある文字 だった。
「もしかして、本当に“誰か”が借りたの？」
「そんなわけ……。」
でも、昨日までは確かに 空白だった。
2人は思わず顔を見合わせた。
「ねえ……もうちょっと調べてみない？」
第三章：狐塚さんを探して
その後、2人は「狐塚」という名前の生徒が学校にいるのかを調べることにした。
職員室前の 歴代卒業生の名簿 をこっそり覗いてみたり、先生にそれとなく聞いてみたりしたが——
「狐塚」という名前の生徒は、今までも、この学校にはいなかった。
「……じゃあ、誰が書いたんだろう？」
「やっぱり、おまじないの効果……？」
狐塚さんは、本当に“いないはずの誰か”だったのだろうか。
少しだけ怖くなりながらも、2人は結局、それ以上深く追及することはしなかった。
エピローグ：返却された本
数日後、図書室に行くと、昨日まで貸し出し中だったはずの本が、本棚に戻されていた。
「狐塚さん……返したのかな？」
恐る恐る貸し出しカードを見ると——
そこには、新しく書き込まれた言葉があった。
《ありがとう》
2人は顔を見合わせた。
「……なんだか、悪いことをしたわけじゃなさそうだね。」
「うん。狐塚さん、ちゃんと返してくれたし。」
すみれは少し考えてから、微笑んだ。
「ねえ、次はどんなおまじないを試そうか？」
あかりは苦笑しつつも、少しだけワクワクしている自分に気づいた。
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