目次
「幽霊の声が聞けるおまじない」
ある日、友人の佐藤が妙な話を持ち込んできた。
「お前、スマホで幽霊の声が聞けるおまじないって知ってるか？」
「は？」
俺は怪訝な顔をしたが、佐藤はスマホを見せながら続けた。
「この方法で録音すると、普通は聞こえない“何か”が録れるらしい」
ネットで流行っている噂らしい。
やり方は簡単だ。
深夜2時に、部屋を真っ暗にする
スマホの録音アプリを開く
「聞かせてください」と3回つぶやく
1分間、無音のまま録音を続ける
再生すると、“幽霊の声”が入っていることがある
「バカバカしい」と笑ったが、佐藤はニヤリと笑いながら言った。
「じゃあ今夜、お前もやってみろよ」
俺は軽い気持ちで、その夜、おまじないを試してみることにした。
録音された「声」
夜中の2時、部屋を真っ暗にしてスマホをセットする。
俺は小声で、ルール通りに呟いた。
「聞かせてください……聞かせてください……聞かせてください……」
しばらく沈黙が続く。
特に異変はない。
1分経ったところで録音を停止し、再生ボタンを押した。
最初の数秒間は、何も聞こえない。
……と思った瞬間——
「……うしろ……」
耳元で囁くような声が、はっきりと入っていた。
俺は凍りついた。
「ふざけんな……！」
慌ててスマホを放り投げたが、イヤホンをつけたままだったせいで、さらに聞こえてしまった。
「……みつけた……」
ゾッとして、スマホの電源を落とした。
部屋の電気をつけ、何度も後ろを振り返ったが、誰もいない。
気のせいだろうか？
いや、確かに、録音に入っていたはずだ。
そのまま怖くなり、俺は布団を被って震えながら朝を迎えた。
消えない音
翌日、佐藤に録音を聞かせようと思った。
しかし——
スマホを開くと、録音データが消えていた。
「……なんで？」
スマホの履歴にも、どこにもデータは残っていない。
だが、俺の耳には、まだあの囁き声がこびりついていた。
「……うしろ……」
まるで、今も聞こえているかのように。
俺は、ふと考えてしまった。
本当に、聞こえているのか？
それとも、もう……俺のすぐ後ろにいるのか？
それ以来、俺はスマホの録音アプリを二度と開いていない。
だが、夜になると——
イヤホンをつけてもいないのに、時々かすかな囁き声が聞こえることがある。
……俺は、何を聞いてしまったのだろうか。
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