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下法の儀──決して覗いてはいけない 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──奇妙な言葉

大学で民俗学を学ぶ田村翔は、ゼミの課題で「日本各地の呪術」を調べていた。

その中で、ある不気味な言葉を目にする。

──「下法(げほう)」

古い文献によれば、下法とは「禁忌を犯した者を裁くための呪術」だという。

だが、具体的な内容はどこにも記されていない。

ゼミの教授に尋ねても、困ったような顔でこう言った。

「その言葉には触れない方がいい。知るだけで引き込まれるものもあるんだ」

田村は興味を抱き、さらに調査を進めることにした。

しかし、それが恐怖の入り口になるとは、その時はまだ気づいていなかった。

第一章──封印された儀式

田村は古い資料を漁るうちに、地方の小さな村に「下法の儀」に関する記録が残っていることを突き止めた。

好奇心に駆られた田村は、ゼミ仲間の高橋とともに現地を訪れることにした。

村は山奥にあり、すでに住民のほとんどが離れていた。

唯一の住人である老人が、彼らを迎え、低い声で言った。

「お前さんたち、何を調べに来たんだ?」

田村は「下法」について知りたいと伝えた。

すると、老人の顔がみるみる青ざめた。

「あれは……触れてはいけないものだ」

「でも、どういう儀式だったのか知りたいんです」

しばらく沈黙した後、老人は小さく呟いた。

「……“下にいる者”を裁くためのものだ」

第二章──祠の下の穴

老人の話によれば、かつてこの村では「下法の儀」が行われていた。

村の外れにある祠(ほこら)の下には「何か」が封じられており、それを抑えるために定期的に儀式が行われていたという。

しかし、ある時、儀式は突然中止され、村人たちは次々に姿を消した。

「今ではもう誰も行かない……だが、あんたたちみたいなのは、行きたくなるんだろう?」

そう言って、老人は祠の場所を教えてくれた。

その夜、田村と高橋は祠へ向かった。

月明かりに照らされた祠は、異様な雰囲気を放っていた。

扉は壊れ、内部は荒れ果てていた。

そして、奥には地下へと続く小さな穴があった。

「これが……?」

田村が覗き込んだ瞬間、背後でガサリと音がした。

振り返ると、誰もいない。

しかし、どこからともなく囁く声が聞こえてきた。

「……裁かれるべきは、お前だ……」

第三章──下の世界

田村は背筋に冷たいものを感じながら、懐中電灯を穴に向けた。

光が差し込む先に、何かが蠢(うごめ)いている。

高橋が慌てて止めた。

「やめろ! これ、ヤバいやつだ!」

だが、その瞬間、穴の中から無数の手が伸び、田村の足を掴んだ。

「うわぁぁ!!」

そのまま、田村の体は穴の中へと引きずり込まれた。

意識が暗闇に包まれる。

終章──戻れない者

気がつくと、田村は知らない場所にいた。

そこは、白い霧に包まれた異様な空間。

何かが近づいてくる気配がする。

「お前は、何を覗いた?」

田村は恐る恐る振り向いた。

そこには、顔のない人々が無数に立っていた。

彼らの口が、何かを呟いている。

「……下法を破った者……」

田村は、ようやく理解した。

下法とは、「見てはいけないものを見た者を罰する儀式」だったのだ。

そして、自分は今、その世界にいる。

元の世界に戻る方法は、もうなかった。

祠の外で目を覚ました高橋は、穴の前で田村のスマホを見つけた。

画面には、最後のメモが残されていた。

「もう、上には戻れない」



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