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告知事項──友だちの日記に書かれていたこと 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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行方不明になった友だち

俺の友人 タカシ が行方不明になったのは、夏休みに入ってすぐのことだった。

前日まで普通に学校に来ていたのに、次の日からパタリと姿を消した。

警察の捜索も虚しく、結局タカシは見つからなかった。

だが、俺は知っていた。

タカシは、ある日から様子がおかしくなっていたことを。

それは夏休みに入る直前、タカシが俺にこう言ったのがきっかけだった。

「なあ……最近、変なことがあるんだ。」

「変なこと?」

「……俺の部屋に、変な紙が貼られてるんだよ。」

「紙?」

「そう。部屋の壁に、『告知事項』って書かれた紙が毎日貼られてる。」

「え、誰が貼ってんだよ?」

「わからない。でも、内容が変なんだ。」

タカシはポケットから、1枚の紙を取り出した。

『告知事項:タカシさん、準備を始めてください。』

俺は鳥肌が立った。

「……何これ。」

「わからない。でも毎日、内容が少しずつ変わるんだよ。」

それが、タカシと話した最後だった。

タカシの日記

タカシが失踪してから数日後、彼の母親から連絡があった。

「……これ、タカシが最後まで書いてた日記なの。」

手渡されたのは、タカシの日記だった。

「もしかしたら、何か手がかりがあるかもしれないから……」

俺は恐る恐る日記を開いた。

最初のページは普通の内容だった。

《7月12日》
今日、夏休みの宿題が出た。面倒だな。

《7月14日》
部屋の壁に紙が貼られてた。『告知事項:タカシさん、準備を始めてください』って。
誰がやったんだ?

そして——

7月15日から、日記の内容が異常に変わっていく。

告知事項の内容

《7月15日》
今日の告知事項:タカシさん、もうすぐです。

《7月16日》
今日の告知事項:タカシさん、そろそろ部屋を整理してください。

《7月17日》
今日の告知事項:タカシさん、間もなく迎えが来ます。
……迎えって何だ?

タカシは日に日に不安を募らせているようだった。

《7月18日》
今日の告知事項:タカシさん、玄関でお待ちください。

ここで日記が乱れ始めている。

《7月19日》
迎えの者がきた。インターホンを鳴らされた。でもドアを開けなかった。
ずっと「タカシさん、出てきてください」って言ってた。

《7月20日》
今日の告知事項:タカシさん、抵抗は無意味です。
……意味がわからない。誰か助けて。

日記の文字は震えており、ここから文章が支離滅裂になっていく。

《7月21日》
今日の告知事項:タカシさん、最終段階です。
昨日、布団の中に誰かいた。もうダメかもしれない。

そして、7月22日の日記が最後のページだった。

最後の告知事項

《7月22日》
今日の告知事項:タカシさん、受け入れてください。
夜中、耳元で「告知事項です」と囁かれた。
……もう行かなきゃいけないのかもしれない。

さようなら。

ページの最後に、「タカシさん、ご案内します」という文字が別の筆跡で書かれていた。

「……誰が書いたんだよ、これ……」

俺は混乱しながら日記を閉じた。

そしてその日の夜、俺の部屋の壁に貼られている紙を見つけた。

『告知事項:カズキさん、準備を始めてください。』

カズキは、俺の名前だ。

そして、迎えが来る

それから毎日、俺の部屋にも告知事項が貼られるようになった。

『告知事項:カズキさん、荷物をまとめてください。』
『告知事項:カズキさん、玄関でお待ちください。』

俺は必死に紙を破り捨てた。

でも、翌日になると、また新しい紙が貼られている。

そして、7月22日の夜——

インターホンが鳴った。

「……っ!」

モニターを見ると、誰もいない。

だが、インターホンのスピーカーからかすれた声が聞こえた。

「告知事項です……カズキさん、出てきてください……」

俺は恐怖で布団をかぶった。

だが、その夜。

耳元で——

「告知事項です……カズキさん、受け入れてください……」

その瞬間、背後から冷たい手が肩を掴んだ。

「……迎えにきたよ。」

そして、また次の告知事項

翌日。

俺は姿を消した。

部屋の壁には、新たな告知事項が貼られていた。

『告知事項:次の方を探します。』

そして、タカシの日記の最後のページには、こう書かれていた。

「次は、カズキさんです。」

今、俺の部屋に新しい紙が貼られているのを、俺は外から見ている。

なぜなら——

俺はもう、迎えられてしまった側だから。



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