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心理的瑕疵物件——前の住人が残したもの 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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転職を機に、俺は一人暮らしを始めることになった。

不動産屋で紹介されたのは、築15年、2DKのアパート。

家賃は相場より2万円以上安い。

「え? なんでこんな安いんですか?」

そう尋ねると、営業担当の男性が少し口ごもった。

「……いえ、特に問題はありません。ただ、一応……"心理的瑕疵"のある物件になります」

心理的瑕疵(しんりてきかし)。

簡単に言えば、過去に事件や事故、自殺などがあった物件のことだ。

「……何があったんですか?」

俺がそう尋ねると、営業マンは「あまり気にされないのであれば……」と濁した。

家賃の安さに惹かれた俺は、気にせず契約してしまった。

——あれが、間違いだった。

入居初日

引っ越しを終えたその日、特に異常はなかった。

2DKの部屋は広く、窓も大きくて明るい。

「……意外といい部屋じゃん」

俺は特に気にすることもなく、荷解きを続けた。

だが、夜になると少しだけ違和感を感じた。

「誰かに見られている気がする」

リビングの隅、窓の外、廊下の突き当たり——

どこからともなく視線を感じる。

「気のせい、だよな……」

そう言い聞かせて眠りについた。

だが、異変は翌日から始まった。

見えない来客

翌朝、仕事へ行こうと玄関を開けた瞬間、ドアの前に靴跡があった。

玄関マットに、裸足の足跡がくっきりと残っている。

「……え?」

雨も降っていないし、来客もいない。

防犯カメラでも設置しようかと考えながら出社した。

帰宅後、玄関の足跡は消えていた。

「気のせいか……?」

そう思っていたが、夜になるとまた視線を感じた。

今度はハッキリと分かる。

リビングの隅の暗がりから、誰かがじっとこちらを見ている。

だが、そこには誰もいない。

俺は怖くなり、テレビをつけっぱなしにして眠った。

不動産屋からの電話

3日目の夜、突然、不動産屋から電話がかかってきた。

「もしもし、〇〇不動産です」

「あ、どうも」

「……あの、すみません。少し確認したいことがありまして」

「なんですか?」

「お住まいの物件で……何か異変はございませんか?」

「……は?」

妙な質問だった。

「いえ、例えば……足音がするとか、誰もいないのに視線を感じるとか……」

「……なんで、そんなこと聞くんです?」

担当者はしばらく沈黙した後、こう言った。

「実は、前の入居者様が『誰かがいる』と言い残して、退去されたんです。

「……え?」

「しかも、その前の入居者も、さらにその前の方も同じことをおっしゃいまして……」

「ちょ、ちょっと待ってください。じゃあ……心理的瑕疵って、何だったんですか?」

担当者は言い淀んだ後、こう答えた。

「——3年前に、お一人亡くなっています。ただ、その方は住人ではないんです。」

「……は?」

「その方は、入居者の方とは別の方でして……」

「……誰なんですか?」

「……分かりません。亡くなった時、部屋にいたはずの入居者の姿も見つからず、遺体だけがあったんです。しかも、その遺体は——」

担当者はそこで口ごもった。

「……何ですか?」

「壁の中から見つかりました」

壁の中の存在

電話を切った後、俺は恐る恐るリビングの壁を見た。

昨日からずっと、視線を感じていた場所だ。

「……まさか、な」

恐る恐る壁を叩く。

コン……コン……

普通の壁の音。

だが——

リビングの隅、天井近くの壁を叩いた瞬間、

「ゴン……ゴン……」

——内側から、叩き返された。

「……っ!!」

俺は悲鳴をあげ、すぐに逃げ出そうとした。

しかし、足元の床下収納からガタガタと何かが暴れる音がする。

「開けるな……開けるな……!!」

そう自分に言い聞かせたが、視線はまだそこにある。

床下収納の蓋が、ゆっくりと"内側から"開き始めた。

バタンッ!!

俺は玄関まで一気に駆け抜け、外に飛び出した。

その瞬間、リビングの窓から、誰かが俺を見ていた。

顔は判別できないが、ただ一点。

口だけが大きく裂けて、笑っていた。

最後の確認

翌日、俺はすぐに不動産屋に契約解除を申し入れた。

担当者は渋ったが、最終的に解約は通った。

「……やっぱり、何かいたんですか?」

俺がそう聞くと、担当者は困った顔でこう言った。

「……実は、昨日警察から連絡がありました」

「警察?」

「リフォーム業者が、床下収納のさらに下から白骨遺体を見つけたそうです」

「……誰の?」

「……分かりません。ただ、DNA鑑定で分かったのは——」

「……何ですか?」

「3年前に壁から見つかった遺体と同一人物だったそうです」

「……は?」

「つまり、同じ人間が壁の中と床下収納、2度発見されたことになります」

「……そんなこと、ありえないだろ」

「ええ……ですが、その物件はこれで4回目の心理的瑕疵です」

「……4回目?」

「壁の中から見つかるのは、3回目、床下は今回が初めてなんですよ」



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