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暗室に写るもの──現像してはいけない写真 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──フィルムカメラの写真

大学の写真部に所属する佐藤悠真は、ある日、古いフィルムカメラを手に入れた。

骨董市で見つけた年代物のカメラで、価格は異常に安かった。

「フィルムが入ってますよ」

店主の言葉に興味を惹かれ、悠真はそのままカメラを購入した。

「現像、やってみるか……」

フィルムカメラの現像は手間がかかるが、悠真は大学の暗室を借りて写真を現像することにした。

だが、彼はまだ知らなかった。

そのカメラが「何を写すもの」なのかを。

第一章──現像された写真

翌日、悠真は大学の暗室にこもり、フィルムを取り出して現像を始めた。

フィルムはかなり古びており、何が写っているのかも分からない。

「古い街並みとか出てきたら面白いんだけどな……」

現像液に浸し、写真が浮かび上がってくる。

1枚目──

そこに写っていたのは、誰もいない古い木造の家だった。

「おぉ……結構いい雰囲気じゃん」

次々に現像を進める。

2枚目──

同じ家の玄関が写っている。だが、妙なことに気づく。

玄関先に、うっすらと人影のようなものが見える。

「……人?」

ピントが合っていないせいだろうか。幽霊のようにぼんやりとしている。

3枚目──

今度は、玄関の扉が少しだけ開いている写真だった。

「……なんだこれ?」

だんだん気味が悪くなってきたが、興味本位で次の写真を現像する。

4枚目──

──扉の隙間から、誰かがこちらを覗いている。

明らかに、何かがおかしい。

顔は見えない。ただ、黒い影がこちらを見つめているように写っている。

悠真は、現像液に浸かった写真を手が震えながら取り出した。

「……これ、やばくないか?」

だが、まだフィルムは残っている。

恐る恐る次の写真を現像した。

第二章──暗室に現れる影

5枚目──

写真の場所は変わっていた。

今度は、暗室の中が写っていた。

「は……?」

ありえない。

自分が今いるこの暗室とまったく同じ光景が、写真に焼き付いている。

「誰が撮ったんだよ、これ……」

悠真は頭がおかしくなりそうだった。

6枚目──

さっきの写真と同じ暗室だ。

しかし、写真の隅に黒い影が立っている。

悠真は慌てて振り返った。

誰もいない。

「気のせいだ……気のせいだ……」

震える手で、次の写真を現像する。

7枚目──

影が、現像液に浸かった写真を覗き込んでいる。

「……は?」

写真の中の暗室の現像液に、黒い影が映り込んでいる。

そして、悠真は気づいてしまった。

今、自分が現像している写真の中に、誰かが写り込んでいることに。

第三章──現像の終わり

悠真はパニックになりながら、最後の写真を現像した。

8枚目──

暗室のドアが、わずかに開いている写真だった。

そこから、黒い手のようなものが伸びている。

「……もう無理だ!!」

悠真はすべての写真を引き裂き、暗室を飛び出そうとした。

──その瞬間、背後でドアが軋む音がした。

「……あれ?」

確かに、自分は暗室のドアを閉めていたはず。

だが、今は少しだけドアが開いている。

「ウソだろ……?」

恐る恐るドアに近づくと、外は真っ暗だった。

昼間のはずなのに、外はまるで夜のような暗闇。

そして、その暗闇の中から誰かがこちらを見ている気配がする。

「……見つけた……」

低く、濡れたような声が耳元で響いた。

悠真は絶叫し、暗室から飛び出した。

終章──消えない現像

翌日、悠真は写真部の部長にすべてを打ち明けた。

「……カメラは?」

「もう捨てた! 写真も全部破った!」

「そうか……」

部長は少し考え込み、こう言った。

「それ、たぶん“暗室のカメラ”だよ」

「暗室のカメラ?」

「噂だけど、現像するたびに“撮影者の最後の場所”が写るカメラがあるって話があるんだ……」

悠真は青ざめた。

「最後の場所……?」

「つまり、次にお前が行く場所だよ」

部長は真剣な顔で言った。

「……次に、その写真に写っていた場所に、お前は行くことになる」

悠真は震えながら、もう一度思い出した。

最後の写真は、半開きのドアだった。

そして、そこから伸びる黒い手。

──あの場所は、間違いなく今の自分の部屋だった。

次に、あれが来るのは……。



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