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墓地の跡に建つ家──その下に眠るもの 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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格安物件

社会人2年目の夏、俺は会社の近くに異常に安いアパートを見つけた。

ワンルームで家賃3万円。駅から徒歩10分。

「……掘り出し物じゃん。」

不動産会社の担当者は少し申し訳なさそうに言った。

「……こちらの物件、心理的瑕疵(しんりてきかし)がありまして。」

「事故物件ってことですか?」

「いえ、事故ではなく……もともとここ、墓地の跡地なんです。」

「墓地?」

「ええ。20年前まで、ここは古い墓地でした。ですが、移転して更地になった後にアパートが建てられたんです。」

少しだけ気味が悪かったが、俺は安さに負けて契約した。

この時、引っ越すべきじゃなかったと、後から思い知ることになる。

夜中の音

引っ越して1週間。

特に何事もなく過ごしていたが、違和感はすぐに出始めた。

深夜2時ごろ。

寝ていると、カタカタカタ……と部屋の中で何かが動く音がする。

「……地震か?」

起き上がって部屋を見回すが、何も動いていない。

しかし、耳を澄ますと、壁の向こう側から何かをひっかく音が聞こえてくる。

カリ……カリ……カリ……

「隣の部屋か……?」

しかし、隣人は入居しておらず、空室のはずだった。

「……気のせいだろ。」

そう思い、眠りについた。

翌朝、玄関の前に黒ずんだ石が置かれていたことに、俺はまだ気づかないフリをしていた。

おかしな来客

2週間が経った頃、妙な来客があった。

夕方、インターホンが鳴り、ドアスコープを覗くと見知らぬ老婆が立っていた。

「……はい?」

「……この部屋の方……最近、何か変なことはありませんか?」

「え……どちら様ですか?」

老婆は答えず、じっと玄関を見つめている。

「あなた、ここがどこだか知ってますか?」

「え……?」

「ここ、墓地の上なんですよ。」

俺は背筋が凍った。

「知ってます。契約の時に聞きましたけど……」

「まだ、ちゃんと移ってないみたいですね。」

「……移ってない?」

老婆はゆっくりと後ろを振り返った。

俺もつられて外を見る。

……誰もいないはずの駐車場に、黒い影のようなものが立っていた。

「……あれが、まだここにいるんです。」

俺が慌てて目を擦ると、その影は消えていた。

「冗談、やめてください。」

「……あなたも、そのうち“下”に引きずり込まれますよ。」

老婆はそう言い残し、立ち去った。

俺は、ドアをすぐに閉めた。

異常な足音

その夜。

深夜2時過ぎに、部屋の床下から明らかな足音が聞こえてきた。

コツ……コツ……

(下の階の住人か……?)

しかし、おかしい。

俺の部屋は1階で、下はコンクリートの地面のはず。

「……なんだよ……」

耳を澄ますと、足音がゆっくりと部屋の中を歩いている。

そして——

ベッドの下で止まった。

「……いるのか?」

恐る恐るベッドを覗き込んだ。

そこには何もない。

「……気のせいか……?」

そう思って顔を上げた瞬間——

天井に黒い人の形をしたものが張り付いていた。

「まだ、ここにいるよ……」

墓地の跡

翌日、耐えきれなくなった俺は不動産会社に駆け込んだ。

「……すみません、この部屋、何かおかしいです。やっぱり墓地だったからですか?」

担当者は困った顔をして言った。

「実は……あまり知られてないんですが……」

「……なんですか?」

「遺骨が完全に移されてないらしいんです。」

「は?」

「遺族の中には、反対して遺骨を動かさなかった人もいて……。そのまま工事を始めたので、**まだ“そこにある”んです。」

「……遺骨が?」

「ええ。つまり、あなたの部屋の下には、まだ何人かの骨が……」

「やめろ!!」

吐き気が込み上げた。

下に、まだ人がいる?

それはまるで——

墓地の底で眠れなかった者たちが、俺を呼んでいるように思えた。

最後の夜

その夜、俺は最後の悪夢を見た。

夢の中で、俺の足を何本もの手が掴んでいた。

「……返せ……」

「……ここは、わたしたちの場所……」

「……お前も、下に来い……」

目を覚ますと、部屋の床の一部が剥がれていた。

そこから黒い土がむき出しになっている。

まるで下から誰かが這い上がってきた跡のように。

俺はパニックになり、すぐに荷物をまとめてアパートを出た。

翌日、退去届を出し、二度とあの場所には戻らなかった。

その後

半年後、俺はふとあのアパートのことを思い出し、ネットで検索した。

すると、不動産サイトにこう記されていた。

「告知事項:心理的瑕疵あり(墓地跡地)」

「入居者失踪1名、死亡2名」

「失踪1名」が増えていた。

「……また引きずり込まれたのか?」

その夜、俺の家のポストに黒ずんだ石が入っていた。

それは、あのアパートの前に転がっていた石と同じものだった。

まだ、俺は見られているのかもしれない。



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