目次
序章──山奥の廃墟
大学生の飯田翔太は、サークル仲間の高橋とともに廃墟探索へ向かっていた。
今回目指すのは、地元で噂されている「生活感のある廃墟」。
「普通、廃墟って荒れ果ててるじゃん?」
運転しながら、高橋が楽しそうに言う。
「でも、ここは違うんだよ。家具とか生活道具がそのまま残っててさ、まるで誰かがまだ住んでるみたいなんだって」
「いやいや、そんなわけないだろ」
「マジだって。で、行ったやつの話だと、夜になると誰かの生活音がするんだと」
翔太は少し不気味に感じながらも、軽い気持ちでその場所へ向かった。
第一章──残された日常
山奥にあるその家は、外観こそボロボロだったが、確かに異様な雰囲気を放っていた。
玄関の扉はわずかに開いており、無造作に置かれた靴が見える。
「おい、これマジで誰か住んでんじゃねぇの?」
「いや、電気もガスも通ってないらしいぞ」
恐る恐る中に入ると──そこは想像を超える光景だった。
リビングのテーブルには食器と箸が揃えて置かれている。
食べ物こそないが、まるで今朝食事をしたかのような形跡だった。
テレビの前にはスリッパが揃えてあり、壁掛け時計も正常に動いている。
「……おかしいだろこれ」
翔太は背筋に寒気を覚えた。
「なあ、ここ、まだ誰か住んでるんじゃねぇの?」
「そんなわけねぇだろ。だって水道も電気も止まってるって話だし……」
しかし、冷蔵庫を開けると中は空っぽだった。
「……だよな、やっぱり誰も住んでねぇよ」
そう言いながら、奥の部屋へと進んだ。
第二章──奇妙な違和感
寝室には、まだ布団が敷かれている。
それも、まるで昨夜まで人が寝ていたかのような微妙な温もりを感じた。
「ヤバいってここ……」
高橋が震える声で言う。
翔太も同じだった。
違和感は次第に強くなっていく。
・脱ぎっぱなしの服。
・少し湿ったタオル。
・カレンダーには今日の日付が丸で囲まれている。
「なぁ……どう考えても誰かがまだここにいるよな?」
「でも、誰もいない……」
翔太はリビングのカレンダーをもう一度見た。
──今日の日付に赤い丸印がついている。
その横には、手書きでこう書かれていた。
「3月12日 帰ってくる」
「……帰ってくる?」
「誰がだよ……」
高橋が呆然と呟いた瞬間、
──ガタッ
二人は玄関から音がしたのを聞いた。
「……嘘だろ?」
二人は息を殺し、リビングの奥に隠れた。
足音がゆっくりと、廊下を進んでくる。
そして、玄関に置かれていたはずのスリッパがなくなっていることに気づいた。
「……今、誰か入ってきた?」
「ヤバい、逃げるぞ!!」
二人は恐怖で全力で廃墟を飛び出した。
背後からは、明らかに誰かがゆっくりと歩く音がついてくる。
第三章──誰もいないはずの家
車に飛び乗り、エンジンをかける。
「……やばかったなマジで」
「絶対誰か住んでたよ……あれ……」
走り出した瞬間、翔太は思い出した。
「なぁ……カレンダー見たよな?」
「見たよ……今日、帰ってくるって書いてあった……」
「おかしいよな。誰が帰ってくるんだよ」
しかし、最も恐ろしいことに気づく。
「……てかさ、俺らあの家、勝手に入ったよな?」
「……あぁ」
「玄関の鍵、閉まってなかったよな?」
「……あぁ」
「でも、スリッパはあったよな」
「……あった」
翔太はゾッとした。
「俺らが帰る時、スリッパなくなってたよな……」
高橋は血の気を失った顔で言った。
「……あれ、誰のスリッパだったんだよ」
終章──生活が続く廃墟
翌日、二人はどうしても気になり、地元の役場であの家のことを調べた。
結果、あの家は10年前から無人のままだった。
最後に住んでいたのはある家族。
しかし、その家族はある日全員行方不明となり、家はそのまま放置されていたという。
「でも、昨日確かに生活感があったよな……?」
役場の担当者が不思議そうに言った。
「あぁ、あの家ですか……」
「何か知ってるんですか?」
「ええ……あの家、今も誰かが住んでるって噂が絶えないんですよ」
「え?」
「近くの住人がたまに見かけるらしいんです。夜、明かりがついてたり、誰かが玄関に入っていくのを」
「そんな……」
「でも、確認すると誰もいないし、電気も通ってないんですけどね……」
翔太と高橋は言葉を失った。
結局、あの家は今も「生活感のある廃墟」として放置されている。
そして昨夜、彼らとすれ違った「帰ってきた誰か」は──
今も、あの家で生活を続けているのだろう。
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