目次
終電で帰る夜
その日、俺は仕事が長引いてしまい、終電で帰ることになった。
時刻は深夜0時12分。
路線は都内から少し離れた私鉄沿線。
疲れ切った体を座席に預け、うつらうつらと眠りに落ちかけていた。
電車はガタゴトと音を立てながら進む。
(……早く帰りたい……)
そう思って目を閉じた。
……しかし、気づいた時には、電車は見知らぬ駅に停まっていた。
「……え?」
聞いたことのない駅
車内アナウンスが流れた。
「次は……ししぶ駅。ししぶ駅です。」
「ししぶ?」
聞いたことのない駅名だった。
沿線の駅はほぼ覚えているはずだが、そんな名前の駅はない。
しかも、車内にいたはずの他の乗客は、気づけば俺一人だけだった。
「……寝過ごした?」
慌ててスマホの乗換案内を見る。
だが、検索結果に「ししぶ駅」は存在しなかった。
「……どこだよ、ここ。」
電車はゆっくりとドアを開けた。
そして、なぜか足が勝手に動いてしまい、俺はホームに降りてしまった。
誰もいない駅
ホームに降りた瞬間、電車は音もなく発車していった。
「ちょ、待てよ!!」
走り出そうとしたが、すでに電車は見えなくなっていた。
振り返ると、駅は薄暗く、ホームには誰もいない。
壁には色褪せた看板がかかっている。
『ししぶ駅』
やはり聞いたことのない駅名だ。
時計を見ると午前0時13分。
次の電車を待つしかないと思い、ベンチに座ろうとした瞬間——
「……こっち、来ちゃったんだ。」
背後から小さな声がした。
呼びかける声
驚いて振り向くと、ホームの隅に中学生くらいの少女が立っていた。
「……君も、ここに来ちゃったんだね。」
「な、なんだよ。ここどこなんだよ?」
少女は悲しげな顔で答えた。
「ししぶ駅だよ。戻れなくなる駅。」
「戻れなくなる?」
「……ねぇ、次の電車、乗っちゃダメだよ。」
「は?」
「次の電車に乗ったら、もう二度と……」
そこまで言った瞬間、
カンカンカン……
踏切の音が鳴った。
そして、遠くから電車が近づいてくる音がする。
「もう来ちゃった……逃げて!!」
少女が叫んだ。
「え?」
「絶対に乗っちゃダメ!!あれは“帰れない電車”だから!!」
異界行きの電車
電車がホームにゆっくりと滑り込んできた。
……明らかにおかしい。
車体は錆びつき、窓ガラスは真っ黒で何も見えない。
しかし、ドアが開いた瞬間——
車内には、ぎっしりと異様なものが詰まっていた。
人の形をしている何か。
目だけが光り、口元だけが笑っている。
「……乗って……」
「はやく……こっちに……」
それらが、俺を手招きしていた。
「……う、嘘だろ……」
俺は逃げようと振り向いた。
しかし——
さっきまでいた少女の姿は消えていた。
代わりに、ホームの隅に真っ黒な影が立っていた。
「次は、君の番。」
そう囁いた瞬間、影がものすごい速度で俺に向かってきた。
「うわああああ!!!」
俺は全力で走り、ホームから階段へと逃げた。
だが、振り返ると影と車内の異形たちが一斉にこちらを見ていた。
「……逃げなきゃ……!!」
階段を駆け上がると、出口の光が見えた。
「助かる……助かる……!」
元の世界へ
階段を駆け上がった瞬間——
気づいたら、いつもの駅に立っていた。
駅名表示は「終点:○○駅」と書かれている。
(……戻ってきた……?)
周囲には普通の乗客たちが歩いている。
「……夢、だったのか?」
ホッと胸をなでおろした。
しかし、その時。
ホームの隅を見ると——
さっきの少女が立っていた。
彼女は少し悲しげで安堵したような表情で俺を見つめていた。
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