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防犯カメラに映るもの──深夜警備員が見た映像 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──深夜の警備室

大型ショッピングモールの夜間警備員をしている山田は、その日も防犯カメラのモニターを監視していた。

時刻は深夜2時過ぎ。

モール内には誰もいないはずなのに、たまに不可解な映像が映ることがある。

「またかよ……」

いつも同じだ。

・誰もいない通路の照明が一瞬だけ点滅する。
・自動ドアが誰もいないのにスッと開く。
・エスカレーターが深夜なのに勝手に動き出す。

このモールでは昔から、深夜2時を過ぎると異変が起きると言われていた。

しかし、警備員の仕事は「映像を見守るだけ」。

「今日も何事もなく終わればいいが……」

そう思いながら、山田はモニターを眺め続けた。

第一章──映ってはいけないもの

2時14分。

モニターの1番カメラが不自然に揺れた。

「……?」

1番カメラは、地下駐車場の映像を映している。

もちろん誰もいないはずだが、カメラがまるで「何かを追っている」かのようにゆっくりと横に動いていた。

「勝手に動くなんてありえねぇだろ……」

不審に思いながら画面を凝視していると、映像の隅に誰かの足が映り込んだ。

「……は?」

画面の左端。

裸足の人間の足が、ゆっくりと駐車場の奥に歩いていくのが見える。

だが、おかしい。

足だけしか映っていない。

足首から上が、まるで存在しないかのように途切れている。

「……うそだろ……?」

山田は別のカメラ(2番カメラ)に切り替え、別の角度から駐車場を確認した。

──誰もいない。

再び1番カメラに戻す。

すると……

さっきまで奥へ向かっていたはずの足が、今はカメラのすぐ目の前に立っている。

「……っ!!」

モニター越しに、足だけがカメラの前でピタリと止まっているのだ。

「……誰かいるのか?」

山田は無意識にそう呟いた。

すると次の瞬間、カメラが激しく揺れた。

ガクンッ……ガクンッ……

まるで誰かがカメラを手で掴み、乱暴に揺らしているようだった。

「……何やってんだよ……」

山田は動揺しながら、モニターを凝視し続けた。

カメラは激しく揺れたあと、唐突に静止した。

そして次の瞬間──

画面いっぱいに、白い顔が映った。

「うわっ!!!」

顔は明らかに人間ではなかった。

瞳孔のない目。
乾いた皮膚。
口だけが不自然に吊り上がり、笑っている。

その顔が、カメラ越しに山田を真っ直ぐに見つめている。

「……なんだよこれ……!!」

慌てて別のカメラ(3番カメラ)に切り替える。

しかし、3番カメラの映像は真っ暗だった。

「やばい……」

山田は無意識に息を詰まらせた。

そして恐る恐る1番カメラに戻すと──

そこには何も映っていなかった。

「……消えた?」

カメラの前にあったはずの「顔」は、もういなくなっていた。

第二章──もう一人の警備員

その直後。

山田の無線が鳴った。

📻「……もしもし、警備室?」

「……え?」

この時間に連絡してくる人間はいないはずだ。

📻「……すみません、駐車場の点検に来た警備員です。今カメラに映ってましたよね?」

「……駐車場?」

「はい。今、1番カメラの前にいます。さっき映像にトラブルがあったようなので確認しに来ました」

「……待ってください。あなた、今どこですか?」

「だから、1番カメラの前ですって」

「……」

山田は急いで1番カメラを確認した。

──映像には誰もいない。

「今、本当に1番カメラの前にいるんですか?」

「いますよ。ほら、そっちから俺が見えてるはずです」

しかし、カメラには何も映っていない。

「……名前、名乗ってもらえます?」

📻「あぁ、すみません。俺、山田です」

「は?」

「だから、警備員の山田です。今、駐車場の点検に来たんですよ」

──山田は、自分の名前を無線越しに名乗る"何か"を聞いてしまった。

「お前……誰だ……」

📻「だから山田ですって。すぐカメラ見てください。俺、いますから」

震える手で1番カメラを確認する。

次の瞬間──

カメラの中央に、自分とまったく同じ制服姿の男が立っていた。

顔は見えない。

ただ、口だけが異常に吊り上がり、カメラを見上げて笑っている。

📻「ほら、俺いるでしょ?」

「……やめろ!!!」

山田は急いで防犯カメラを全停止し、モニターを消した。

しかし、無線はまだ続いていた。

📻「なんで消すんですか……?俺、今からそっち行きますね」

「やめろ!!誰だお前!!!」

📻「山田ですって。深夜警備員の……」

📻「お前の代わりですから」

終章──映像の記録

翌朝。

別の警備員が出勤すると、山田は防犯カメラ室で気絶していた。

「大丈夫ですか!? 山田さん!!」

彼は震える声で、「カメラを確認しろ」と言った。

カメラの映像を遡ると、午前2時14分。

カメラの前に立つ、二人の山田が映っていた。

・一人目は、椅子に座る山田。
・二人目は、カメラを見上げて笑う山田。

そして最後の映像。

カメラを見上げていた偽物の山田が、ゆっくりとカメラに向かって呟いた。

「次は、お前の番だよ」



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