目次
序章:帰宅後の違和感
「……なんで?」
会社員の 佐藤悠人(さとう・ゆうと) は、目の前の光景に違和感を覚えた。
いつものように残業を終え、マンションに帰ってきたのだが——
玄関の鍵が合わない。
「いや、そんなはずないだろ……。」
ポケットからいつも使っている鍵を取り出し、再び鍵穴に差し込む。
だが、回らない。
「おかしいな……。」
試しに何度もガチャガチャと回そうとするが、まったく噛み合わない。
「……鍵、間違えた?」
改めて鍵を確認するが、間違いなく自分の部屋の鍵だった。
焦りながら玄関のプレートを見ると——
そこには、見慣れない部屋番号が書かれていた。
《302号室》
「……え?」
悠人の部屋は、303号室のはずだった。
「ちょっと待て、俺……部屋、間違えたのか?」
だが、おかしい。
—— ここは303号室なはずだ。
第一章:違うマンション
「疲れてるのか?」
頭を振ってもう一度確認するが、どう考えても自分のマンションだった。
外観も、廊下も、階段も—— 何もかもが見慣れたもの。
ただひとつ違うのは、302号室になっていること。
「こんなの……おかしい。」
混乱しながらも、マンションの管理人に電話しようとスマホを取り出した。
しかし、画面には「圏外」の文字。
「は? 圏外?」
今までこんなことはなかった。
試しにネットを開こうとするが、何も繋がらない。
(とりあえず、外に出よう。)
そう思い、階段を駆け下りる。
しかし——
1階に降りると、そこは知らない景色になっていた。
第二章:異世界の住人
悠人のマンションは、駅近のビル街にある。
なのに、1階に降りると、そこには古びた木造の家々が並ぶ薄暗い街並みが広がっていた。
「……なんだ、これ……。」
まるで昭和の時代に迷い込んだような街並み。
さらに、妙なことに気づいた。
道を歩いている人々の顔が、ぼんやりと歪んで見える。
まるでピントが合っていない写真のように、顔の輪郭がはっきりしない。
悠人は恐怖に駆られ、再びマンションに戻ろうとした。
しかし——
さっき降りたはずの階段が、どこにもない。
「……は?」
代わりに、背後にあったのは見覚えのない黒い扉だった。
そこには、白いプレートでこう書かれていた。
《303号室》
「俺の部屋……?」
なぜか、先ほど開かなかった自分の鍵が、この扉にはピッタリ合いそうな気がした。
しかし、扉の向こうから——
「……開けて。」
女の声が聞こえた。
第三章:帰るべき場所
「……誰だ?」
扉の向こうの303号室は、確かに自分の部屋のはず。
だが、悠人は知っている。
この世界は、何かがおかしい。
そして、扉の向こうにいる「何か」も。
「……開けたら、戻れない気がする。」
そう思い、悠人は扉から一歩離れた。
しかし、ドアノブがゆっくりと回り始めた。
「……開けて……」
ギィィ……
扉が、少しだけ開いた。
暗闇の中、青白い手がニュッと伸びてくる。
「……帰れないよ?」
女の顔が少しだけ覗く——
目が、真っ黒だった。
「うわぁぁぁぁ!!」
悠人は反射的に目を閉じた。
その瞬間——
耳をつんざくような耳鳴りが響き、すべてが暗転した。
エピローグ:元の世界?
「……っ!!」
気がつくと、悠人は見慣れた303号室の前に立っていた。
スマホの画面を見ると、電波は正常に戻っている。
「……夢?」
鍵を差し込むと、今度はスムーズに回った。
部屋の中も、いつも通りだった。
「……やっぱり、疲れてたのか?」
胸を撫で下ろし、リビングのソファに腰を下ろした。
しかし、ふと玄関の方を見て、全身が凍りついた。
玄関のスリッパが、2足並んでいた。
そして次の瞬間、リビングの扉がカチリと音を立てて開いた——。
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