目次
見覚えのないスリッパ
一人暮らしを始めて半年が経ったころ、俺はある違和感に気づいた。
玄関に、知らないスリッパが揃えてある。
俺は普段、スリッパを履く習慣がない。
来客も滅多にないし、友人が遊びに来た時は、全員靴下や裸足で過ごしていた。
「……こんなの、あったか?」
スリッパは白地に小さな花柄の刺繍が入ったものだった。
気味が悪くなり、すぐにゴミ袋に入れて捨てた。
だが、それが最初の異変だった。
勝手に揃えられるスリッパ
翌朝——
「……嘘だろ?」
また同じスリッパが玄関に揃えてあった。
「いや、昨日捨てたはずだよな……?」
慌ててゴミ箱を確認すると、そこにはスリッパはなかった。
俺は気のせいだと思いたかったが、念のためスリッパをビニール袋に入れ、マンションの外のゴミ捨て場に捨てた。
もう戻ってこないはずだった。
だが、次の日の朝——
「……また、ある」
玄関には、やはりスリッパがきちんと揃えて置かれていた。
この時点で、俺は確信した。
これは、何かおかしい。
スリッパの持ち主
友人に相談すると、「誰か合鍵持ってんじゃね?」と言われた。
すぐに管理人に確認したが、俺以外に鍵を持っている人間はいないと言われた。
防犯カメラも確認したが、不審な人物が映ることはなかった。
「じゃあ、誰がこのスリッパを置いているんだ?」
怖くなり、俺はスリッパを今度こそ完全に処分しようと考えた。
その夜、俺はスリッパをゴミ袋に入れ、近くの川へ持って行った。
「もう戻ってくるなよ……」
そう呟きながら、スリッパを川に投げ入れた。
……しかし、スリッパは沈まなかった。
水面に浮かび、ゆっくりとこちらに向かって流れてくる。
まるで、誰かが履いて歩いているかのように。
俺は恐怖に駆られ、その場を走って逃げた。
ノックの音とスリッパの足音
深夜3時。
「コン、コン……」
部屋の玄関から、ノック音が聞こえた。
こんな時間に誰か来るはずがない。
俺は布団の中で息を殺した。
「スッ……スッ……」
次の瞬間、スリッパの足音が聞こえた。
——部屋の中から。
玄関から、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる音。
「スッ……スッ……スッ……」
足音は、俺のベッドのすぐ近くで止まった。
恐る恐る目を開けると——
スリッパだけが、ベッドの横に揃えて置かれていた。
その瞬間、耳元で囁き声が聞こえた。
「……履いて、ください」
俺は、そのまま気を失った。
それ以来……
翌朝、目を覚ますと、スリッパは消えていた。
俺はすぐに引っ越した。
だが、新しい部屋に移ってから数日後——
玄関に、白い花柄のスリッパが揃えてあった。
まるで、俺の後をずっとついてきているかのように——。
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