目次
序章──奇妙なルール
会社員の田中翔太は、仕事の都合で安いアパートに引っ越した。
築年数は古かったが、特に問題はなさそうだった。
しかし、引っ越してすぐ、大家の吉田という老人から奇妙なことを言われた。
「スリッパは、必ず揃えておくこと」
「……え?」
「部屋の玄関に置くスリッパは、必ず左右揃えておきなさい。バラバラのままにすると……“良くないこと”が起こるからね」
翔太は苦笑しながら聞き流した。
「スリッパの置き方で何か起こるわけないだろ」
しかし、それが間違いだった。
第一章──スリッパの異変
引っ越して数日後の夜。
翔太は疲れて帰宅し、玄関でスリッパを脱ぎ、適当に置いた。
そのままシャワーを浴び、ビールを飲んで寝る準備をしていた。
──その時、ふと違和感を覚えた。
「……俺、スリッパ、こんな風に置いたか?」
玄関を見ると、揃えていなかったはずのスリッパが、綺麗に並べられている。
「……気のせいか?」
翌日、会社から帰宅すると、また同じことが起こった。
玄関のスリッパがきちんと揃えられている。
「……まさか、大家が勝手に入ってる?」
不安になり、大家に尋ねると、
「そんなことするわけないでしょ」
と言われた。
翔太はさらに気味が悪くなった。
「……まあ、スリッパが揃ってるだけだし……」
そう自分に言い聞かせ、その日は寝ることにした。
しかし、異変はこれで終わらなかった。
第二章──もう一足のスリッパ
数日後の深夜。
何かの物音で目が覚めた。
時計を見ると、午前3時過ぎ。
「……何の音だ?」
リビングを見回すが、特に異常はない。
だが、ふと玄関に目を向けた瞬間、心臓が止まりそうになった。
スリッパが、二足揃っている。
「……は?」
翔太が持っているスリッパは一足だけのはず。
だが、見覚えのないスリッパが、隣にもう一足増えている。
「なんだよ、これ……」
恐る恐るスリッパを手に取ると、それは濡れていた。
まるで、誰かが外から帰ってきたかのように。
「……誰が?」
震えながら玄関のドアの鍵を確認すると、しっかり閉まっている。
「いや、無理だ……」
翔太はスリッパをゴミ袋に突っ込み、そのままベッドにもぐり込んだ。
しかし、悪夢はまだ続いていた。
第三章──帰ってくる者
翌朝、ゴミ袋を捨てようとした翔太は、あることに気づいた。
「……スリッパが、ない?」
昨夜ゴミ袋に入れたはずのスリッパが、どこにもない。
気味が悪くなり、仕事を早めに切り上げて帰宅すると──
玄関のスリッパが、三足に増えていた。
「嘘だろ……?」
完全に恐怖を感じた翔太は、意を決して大家のもとへ向かった。
「俺の部屋……何かあるんですか?」
すると、大家は深刻な顔でこう言った。
「やっぱり出たか……」
大家によると、翔太の部屋では10年前に家族が暮らしていた。
しかし、その家族はある日忽然と姿を消した。
「それ以来、夜になると“帰ってくる”んだよ」
「帰ってくる……?」
「この部屋の“元の住人”がな」
翔太は血の気が引いた。
「じゃあ、スリッパって……」
「その家族は4人だった。スリッパが増えていくのは……」
「……まだ、全員帰ってきていないから?」
大家は無言で頷いた。
翔太はその日のうちに荷物をまとめ、二度と部屋へ戻ることはなかった。
終章──誰が履くスリッパなのか
数日後。
翔太は友人の部屋に泊まりながら、試しに不動産サイトで例の部屋の情報を検索した。
すると、すでに新しい入居者募集の広告が出ていた。
「……もう募集してるのかよ」
しかし、物件の写真を見た瞬間、翔太はゾッとした。
そこには、綺麗に掃除された玄関の写真が載っていた。
その玄関には──
四足のスリッパが、綺麗に揃えられていた。
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