目次
序章──封印された儀式
大学で民俗学を研究する藤井翔太は、教授から「奇妙な儀式が行われた村」の話を聞いた。
「お前、群霊召喚の儀って知ってるか?」
「……初めて聞きました」
教授は古い文献をめくりながら、こう続けた。
「ある村では、“魍魎(もうりょう)”と呼ばれる異形のものを召喚する儀式があったらしい。群れを成す霊──つまり“群霊”を集め、そこから強大な魍魎を呼び出すという呪術だ」
「なぜそんなことを?」
「理由は分かっていない。だが、その村は儀式を行った直後に消滅したと言われている」
「消滅……?」
「村の住人は全員、姿を消したそうだ。それ以来、その地には誰も近づかなくなった」
翔太は、この話に興味を持った。
そして、好奇心から、その消えた村の跡地へと向かうことにした。
第一章──群霊の集まる地
数日後、翔太は村の跡地へと足を踏み入れた。
地図にも載っていないその場所は、山奥の鬱蒼(うっそう)とした森に囲まれ、まるで時間が止まっているようだった。
「本当に、ここに村があったのか?」
足元には崩れかけた鳥居や、風化した石碑が転がっている。
その中に、一つだけ妙なものを見つけた。
──黒ずんだ祭壇。
中央には、何かの紋様が刻まれている。
「群霊降臨の刻、魍魎を迎えん──」
古びた文字を指でなぞると、ザワッ……と空気が揺れた気がした。
「……気のせいか?」
その時だった。
──コツ……コツ……コツ……
背後で、何かの足音がした。
しかし、振り向いても誰もいない。
「気味が悪いな……」
翔太はその場を後にしようとした。
だが、森を抜ける途中、ふと気づいた。
──足音が、一つずつ増えていく。
最初は一つだった。
それが二つ、三つ……
やがて、周囲から無数の足音が響き渡るようになった。
「……誰かいるのか?」
呼びかけても、返事はない。
だが、確実に“何か”が周囲を取り囲んでいた。
翔太は走った。
しかし、出口が見つからない。
そして気づく。
──いつの間にか、村の跡地に戻っていた。
第二章──魍魎召喚の儀式
息を切らしながら、翔太は祭壇の前に立っていた。
「どうなってるんだ……?」
その時。
──ボソボソ……ボソボソ……
耳元で、不気味な囁き声が聞こえた。
「……!」
恐る恐る振り向くと、そこには無数の人影が立っていた。
男も女も、老人も子供も、すべてが無表情で翔太を見つめている。
彼らは、明らかに“この世の者ではない”。
「……お前たちが、この村の住人か?」
すると、群霊たちはゆっくりと口を開いた。
「……われらは、迎える者」
「迎える……?」
「お前が、扉を開いた」
次の瞬間、翔太の視界が暗転した。
第三章──魍魎の目覚め
気がつくと、翔太は地面に横たわっていた。
頭が割れるように痛い。
「……俺は、どうなった?」
起き上がると、目の前の祭壇が赤黒く光っているのが見えた。
そして、その上には、何かが浮かんでいた。
──黒く蠢く影。
それは人間の形をしていたが、顔はぼやけ、無数の目と口があるように見えた。
「……これが、魍魎……?」
翔太は理解した。
村人たちは、群霊を集めることで、この存在を召喚しようとしたのだ。
しかし、何らかの理由で儀式は失敗し、村ごと消滅した。
では、なぜ今になって“それ”が現れたのか?
答えは簡単だった。
──翔太が、封印を解いてしまったからだ。
魍魎はゆっくりと翔太に近づいてきた。
「……次は、お前が儀式を完成させる番だ」
体が動かない。
影が翔太を包み込む。
視界が真っ暗になり──
次に目を開けた時、翔太は見知らぬ村に立っていた。
「ようこそ、新たなる“迎え入れる者”よ」
目の前には、かつて消えたはずの村の住人たちが立っていた。
そして翔太は気づく。
今度は自分が、次の“迎え入れる者”になってしまったのだ。
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