怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

【元の世界に戻りたい】違和感だらけの帰宅 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章:いつもと違う朝

「……なんか、変だな。」

大学生の瀬戸優斗(せと・ゆうと) は、目覚めた瞬間に違和感を覚えた。

部屋はいつも通り、天井もベッドも変わらない。

けれど——

空気が違う。

窓の外を見ると、見慣れたはずの街並みがどこか歪んで見えた。

「……寝ぼけてるのか?」

そう思いながら着替えてリビングに行くと、母親が朝食を準備していた。

「おはよう、優斗。」

「……おはよう。」

しかし、母親の顔がわずかに違って見えた。

ほんの少しだけ、目の位置がズレているような——。

「早く食べないと遅刻するよ。」

「……うん。」

違和感を振り払おうと、優斗はパンをかじった。

だが、口に入れた瞬間——

味がしない。

(……何か、おかしい。)

第一章:友人たちの異変

大学に向かうと、いつもの友人 翔太(しょうた) が話しかけてきた。

「よっ、優斗!」

「おう。」

普段と変わらないやりとり。

でも——

「昨日のレポート、マジきつかったよな。」

「……レポート?」

「え? お前が教えてくれた課題だろ?」

「俺、そんなの聞いてないけど……。」

翔太が一瞬、ぎこちなく笑った。

「何言ってんだよ、お前が教えてくれたんだって。」

「……そうだっけ?」

話しているうちに、周囲の学生たちが妙に感じられた。

—— みんなの顔が、少しずつ歪んでいる。

「なあ、お前ら……。」

言いかけた瞬間、講義室のドアが開いた。

「おはよう。」

教授が入ってきた——

だが、その顔には目も鼻も口もなかった。

第二章:狂い始める世界

「……え?」

周りを見回すと、他の学生たちは普通に授業を受けている。

優斗だけが、教授の異常さに気づいていた。

「今日の講義は……」

口がないはずの教授が、普通に話し始めた。

しかし、その声は頭の中に直接響いてくる。

「……ダメだ、ここにいたらおかしくなる。」

優斗は荷物を持って教室を飛び出した。

しかし、廊下に出ると——

大学の構造が変わっていた。

さっきまでいた校舎のはずなのに、廊下が無限に続いている。

「おい……嘘だろ……?」

扉を開けても、どこも同じ廊下。

スマホを取り出し、時間を見ると——

「00:00」

「壊れてるのか?」

そう思いながら外に出ようとした瞬間——

後ろから無数の足音が聞こえた。

第三章:元の世界に戻る方法

「優斗。」

背後から、誰かが自分の名前を呼んだ。

振り向くと、そこには知らない男が立っていた。

「……誰?」

男は淡々と言った。

「お前、ここにいるべきじゃない。」

「……どういうことだ?」

「お前がいるのは“お前の世界”じゃない。」

「じゃあ、どうすればいい?」

男は微笑み、ポケットから小さな紙切れを取り出した。

そこには、こう書かれていた。

「12時ちょうどに目を閉じろ」

「これを読んでいるということは、まだ間に合う。」

「お前がここに来た理由は知らない。でも、“元の世界に戻りたい”なら……12時ちょうどに目を閉じるんだ。」

「……それだけ?」

「それだけだ。」

そう言うと、男は消えた。

エピローグ:戻ったはずの世界

優斗は時計を確認した。

「11:59」

(戻れる……のか?)

周囲の景色はますます歪んでいく。

大学の廊下はねじれ、見知らぬ人々の顔はぐにゃりと崩れていった。

「あと30秒……」

足音が近づく。

「15秒……」

誰かが背後に立っている気配。

「もう戻れないよ?」

女の囁き声が聞こえた。

「5秒……。」

勇気を振り絞り、優斗は目を閉じた。

—— 目を開けると、見慣れた自分の部屋だった。

時計を見ると、朝の7時。

(……戻った?)

ホッとしてリビングへ行くと、母親が朝食を用意していた。

「おはよう、優斗。」

「……おはよう。」

今度は、母の顔に違和感はない。

しかし——

パンを口に入れた瞬間、味がしなかった。

(……まだ、ここは……?)

優斗の背中に、再び冷たい汗が流れた。



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