目次
地図にない小屋
大学のサークル仲間とキャンプに行ったときのことだ。
俺たちは山奥のキャンプ場に泊まり、夜になると少し冒険気分で森の中を散策することになった。
「ちょっと奥まで行ってみようぜ!」
地図を持っていた田中が先頭を歩き、俺、村上、翔太の4人で森の中へ入った。
懐中電灯を頼りに歩いていると、突然、田中が足を止めた。
「……なんだ、あれ?」
木々の間に、古びた小屋が見えた。
「こんなとこに小屋なんてあったか?」
「地図には載ってねえな……」
小屋は木造で、屋根は崩れかけ、壁には黒いシミが広がっていた。
まるで、何年も放置されているような雰囲気だった。
「ちょっと覗いてみるか?」
好奇心に駆られた俺たちは、小屋に近づいた。
中にあるもの
扉は半開きになっており、中を覗くと、何もない部屋が広がっていた。
家具もなく、埃っぽい床があるだけ。
しかし、奥の壁には何かが書かれていた。
懐中電灯を向けると、そこには——
「ここを出たらダメ」
「……なんだよ、これ?」
文字は、爪で引っ掻いたような跡で書かれていた。
「やばくね? 帰ろうぜ……」
翔太が不安そうに言った。
だが、田中はニヤニヤしながら言った。
「ビビってんのか? 何もねえよ」
そう言いながら、田中は部屋の中に入った。
俺たちも仕方なく後に続いた。
だが——
その瞬間、扉がバタン!と閉まった。
「うわっ!!」
村上が慌てて扉を開けようとする。
だが、ビクともしない。
「嘘だろ? さっきまで開いてたじゃん!」
「おい、誰かふざけてるんじゃねえだろうな?」
誰もふざけていない。
俺たちは、閉じ込められたのだ。
部屋が変わる
「とにかく開ける方法探そう!」
部屋の中を調べると、奥の床に小さな扉があった。
「地下室か?」
田中が躊躇なく扉を開ける。
すると——
そこには、無数の人間の手形が壁一面に残されていた。
そして、壁にはこう書かれていた。
「ここにいれば大丈夫」
俺たちは言葉を失った。
「……誰か、ここに閉じ込められてたのか?」
「いや、それより……」
翔太が震える声で言った。
「さっきの壁の文字、『ここを出たらダメ』って書いてあったよな?」
俺はゾッとした。
「じゃあ……ここって、どこってことだ?」
「この小屋か、それとも“外”か……?」
俺たちは沈黙した。
すると——
「カリ……カリ……」
小屋の外から、何かが爪で引っ掻くような音が聞こえた。
「……誰かいるのか?」
田中が扉に耳を当てる。
すると、次の瞬間——
ドンッ!!!
外から、強い衝撃があった。
「ヤバい!! 何かいる!!」
俺たちは全力で扉を押さえた。
だが、扉の隙間から——
“何かの目”が、じっとこちらを覗いていた。
一人足りない
必死で扉を押さえながら、翔太が叫んだ。
「どうする!? 出るのか!? 出ないのか!?」
「……ここにいたら、ずっと閉じ込められる!!」
「でも、外には何かがいるぞ!?」
選択肢はなかった。
「せーので、外に飛び出すぞ!!」
「……わかった!!」
「せーの!!」
俺たちは力いっぱい扉を押し開け、一斉に外へ飛び出した。
すると——
小屋は消えていた。
「え?」
振り返ると、そこにはただの森が広がっていた。
小屋の跡すら残っていない。
「……夢か?」
だが、俺たちの服には埃と汚れがついていた。
確かに、あの小屋にいたはずなのに。
「……ん?」
その時、俺は異変に気づいた。
「おい、田中は?」
「え?」
翔太と村上が周りを見渡す。
「……田中?」
いない。
どこにも。
田中だけが——
姿を消していた。
田中の声
警察に通報したが、田中は行方不明のままだった。
あの場所へ戻っても、小屋は二度と見つからなかった。
それから数日後——
田中のスマホから、俺に着信があった。
画面には、「田中」の名前が表示されている。
「田中!? お前、どこにいるんだ!?」
だが、電話の向こうから聞こえてきたのは——
「ここにいれば、大丈夫」
俺は全身に鳥肌が立った。
そして、その言葉の後ろで——
無数の囁き声が響いていた。
「出てきて……出てきて……」
俺は震えながら通話を切った。
だが、それ以来——
深夜になると、俺の部屋の外でかすかな囁き声が聞こえるようになった。
「ここにいれば、大丈夫」
——まるで、小屋の中から聞こえてくるように。
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