目次
立入禁止の部屋
俺がバイトしているビルには、決して開けてはいけない扉がある。
ビルの地下1階、非常階段の奥にあるその扉には、赤いスプレーで「立入禁止」と書かれていた。
他の非常扉と違い、鍵がかかっているわけではない。
だが、誰も開けようとしない。
ある日、同じバイト仲間の田中が興味本位で言った。
「なあ、あの扉の向こう、何があるんだろうな?」
「やめとけって。何か理由があるんだろ」
そう言ったが、田中は笑った。
「でもさ、気にならねぇ? 鍵もないのに誰も開けないとかさ」
俺は気味が悪かったが、田中は好奇心に勝てなかったようだ。
そして、その日の深夜——
田中は扉を開けた。
扉の向こうの異変
「……え?」
田中が驚いたように呟く。
俺も覗き込んだ。
そこには、普通の地下通路が続いているだけに見えた。
「なんだよ、拍子抜けだな」
田中は笑いながら、扉の向こうへと足を踏み入れた。
「おい、やめとけって!」
俺は止めたが、田中はどんどん奥へ進んでいく。
仕方なく俺も後を追った。
——すると、何かがおかしいことに気づいた。
歩いても歩いても、出口がない。
「……こんなに長い廊下、あったか?」
冷たい空気が漂い、静寂が支配する。
——まるで、ここだけ別の世界のように。
俺が振り返ると、扉が消えていた。
立入禁止の理由
「やべぇ、戻れねぇ!!」
俺たちはパニックになった。
すると、足音が聞こえた。
「……誰かいるのか?」
廊下の奥に目を凝らす。
すると、ぼんやりとした人影が見えた。
それは、こちらへ向かって歩いてくる。
だが——
顔がない。
「うわっ!!」
俺たちは悲鳴を上げ、後ずさった。
すると、周囲の壁に無数の手形が浮かび上がる。
そして、どこからか囁く声が響いた。
「戻れない……戻れない……」
「お前たちも、こっちに来い……」
俺たちは必死で逃げた。
すると、突然——
目の前に元の扉が現れた。
「開けろ!!」
田中がドアノブを掴み、力いっぱい引いた。
扉が開くと同時に、俺たちは外へ転がり出た。
そして、扉は音もなく閉じた。
……気づくと、あの扉には、
「絶対に開けるな」
と、新しい文字が追加されていた。
田中の異変
その後、田中は無言のまま家に帰った。
しかし、次の日からバイトに来なくなった。
連絡をしても、返事はない。
気になり、田中の家を訪ねた。
玄関の扉は、開いていた。
「田中?」
家の中は、異様なほど静かだった。
リビングに入ると、田中が壁に向かって立っていた。
「おい、大丈夫か?」
田中が、ゆっくりとこちらを振り向いた。
——顔が、なかった。
俺は叫び声を上げ、必死で逃げた。
それ以来、田中は行方不明のままだ。
あの扉を開けたことが原因なのか?
それとも、田中はまだ——
あの向こう側にいるのかもしれない。
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