目次
取り壊されない家
地元に、ずっと放棄されたままの家がある。
場所は住宅街の外れ。周囲は新しい家が建ち並ぶのに、そこだけ時間が止まったように古びたまま残されていた。
俺が子供の頃から見ているが、一度も住人がいたことはない。
「……何で取り壊さないんだろうな?」
ある日、友人のタカシとその家の前を通ったとき、俺は何気なくつぶやいた。
すると、タカシは少し戸惑った顔をした。
「いや、去年取り壊されたはずだぞ?」
「……は?」
「俺、業者が解体してるの見たし。」
「でも、ほら、まだ建ってるぞ。」
俺たちは目の前の家をじっと見つめた。
確かに、そこには昔から変わらない古びた家があった。
「……おかしいな。」
タカシがスマホで地元の情報を検索すると、そこには奇妙な書き込みがあった。
『○○町の放棄された家、去年取り壊されたはずなのに、また建っている。』
「……どういうことだよ。」
俺たちは妙な胸騒ぎを覚えた。
そして、確かめるために家の中に入ることにした。
放棄された家の中へ
門は錆びついていて、少し力を入れるとギィと音を立てて開いた。
庭には雑草が生い茂り、窓ガラスは割れていた。
「……誰も住んでないよな?」
慎重に玄関を押すと、鍵はかかっておらず、簡単に開いた。
中に足を踏み入れると——
そこは驚くほど綺麗な状態だった。
埃ひとつなく、家具も整理整頓され、まるでついさっきまで誰かが住んでいたかのような雰囲気だった。
「おい……本当に放棄された家か?」
リビングには温かいお茶が置かれていた。
「誰かいるのか?」
しかし、奥の部屋を覗いても誰の姿もない。
まるで、人だけが忽然と消えたようだった。
外に出られない
「……やばい、これ、出よう。」
俺たちは異様な空気を感じ、急いで玄関に向かった。
しかし、玄関のドアを開けようとすると——
開かない。
「え?」
力を入れてもびくともしない。
「なぁ、鍵閉めたか?」
「閉めてない!!」
俺たちは焦り、窓を開けようとしたが、それもまるで壁の一部のようにびくともしない。
俺たちは、この家に閉じ込められたのだ。
「おい、マジでやばいって……!」
その時——
カタ……カタ……
奥の部屋から、何かが動く音がした。
俺たちは息を飲んだ。
「……誰か、いるのか?」
恐る恐る奥の部屋へ向かうと——
そこには、家の間取りと全く同じ光景が広がっていた。
「……は?」
俺たちは愕然とした。
今いるリビングと、奥の部屋のリビングがまったく同じなのだ。
家具の配置も、テーブルの上のお茶まで、寸分違わず同じだった。
「どうなってるんだよ……!」
さらに、振り返ると——
そこには、俺たちが入ってきた玄関と同じ玄関があった。
「……出られない……」
俺たちは完全に理解した。
この家は、外に繋がっていない。
放棄された家の理由
俺たちはパニックになりながらも、手当たり次第に扉を開け、窓を叩いた。
だが、どこへ行っても同じ部屋が続いているだけだった。
「どうすればいいんだよ……!」
その時、リビングのテーブルに古い手帳が置かれているのに気づいた。
震える手で開くと、そこにはこう書かれていた。
『ここに入ったら、決して振り向いてはいけない。』
『振り向くと、もう戻れなくなる。』
「……振り向くなって?」
意味がわからなかった。
だが、その瞬間——
俺たちの背後から、カタ……カタ……と、さっきとは比べ物にならないほどの音が聞こえてきた。
「……ッ!!」
何かがすぐ後ろにいる。
だが、振り向いてはいけない。
俺たちは必死に前を向き、ただ玄関のドアを開けることだけに集中した。
「開け!!」
その瞬間——
バタン!!
気づくと、俺たちは外に立っていた。
「……出れた?」
振り返ると——
そこには、元通りの廃れた家があるだけだった。
家具も、温かいお茶も、何もかも消えていた。
俺たちは無言で家を後にした。
そして、また……
それ以来、俺たちは二度とあの家に近づかなかった。
だが、数ヶ月後——
地元の掲示板に、こんな書き込みがあった。
『○○町の放棄された家、ついに取り壊されたらしい。』
俺はゾッとした。
またか。
あの家は取り壊されても、何度でも建ち直るのだ。
まるで——
誰かを迎えるために。
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