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立入禁止の部屋──気にしなければよかったこと 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──特別な許可

高校2年生の田中翔太は、生徒会の仕事で立入禁止の資料室へ行くことになった。

資料室は旧校舎の奥にあり、普段は施錠されている。

「先生、資料室を使う許可をいただけますか?」

「いいけど……あそこは普段誰も使ってないから、気をつけるんだよ」

先生は少し言いにくそうな表情を見せたが、翔太は特に気にせず、鍵を受け取った。

「そんなに大げさな場所なのか?」

そう思いながら、翔太は資料室へ向かった。

第一章──少し気になったこと

資料室の扉を開けると、意外にも普通の部屋だった。

古い本棚や机が並び、空気は少し埃っぽい。

「まぁ、こんなもんか」

資料を探していると、ふと気になることがあった。

本棚の一つが、微妙にずれている。

「……?」

誰かが動かしたのか?

少し気になったが、目的の資料を見つけたので、そのまま作業を終えた。

扉を閉め、鍵をかける。

「特に何もなかったな」

翔太はそのまま帰り、友人の高橋に報告した。

「え、あの資料室入ったの?」

高橋は驚いた表情を見せた。

「先生の許可もらったし、普通の部屋だったよ」

「でも、あそこ何かあるって噂だぞ?」

「気にしすぎだろ」

翔太は笑って受け流した。

だが、この時、本棚のズレについてもう少し気にしていたら、後に起こることを防げたかもしれない。

第二章──友人の異変

数日後。

今度は高橋が資料室に行く用事ができた。

「お前が行って大丈夫だったなら、俺も平気だよな」

「気にするなって。普通の部屋だから」

翔太は軽く送り出した。

しかし──

高橋が戻ってきた時、彼は異常に顔色が悪かった。

「……おい、どうした?」

「お前……本当に何もなかったのか?」

「え?」

「……本棚の向こうに誰かがいたぞ」

翔太の心臓が跳ねた。

「……何言ってんだよ」

「俺、資料を探してたんだけどさ……ふと気づいたら、本棚の隙間から誰かがこっちを見てたんだよ」

「隙間……?」

「黒い服を着た女みたいなやつが、じっと俺を見てた。声も出なくて、急いで部屋を出たんだよ……」

翔太は息が詰まるような感覚を覚えた。

──あの日、自分が資料室に入った時、確かに本棚が少しずれていた。

「まさか……」

もし、あの時、本棚の向こうを覗いていたら。

もし、気になってズレを直していたら。

もし、その瞬間、何かと目が合っていたら──

自分が、高橋の立場だったかもしれない。

翔太は、もう二度と資料室には近づかないと決めた。

そして高橋も。



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