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裏庭の小屋──開けてはいけない扉 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──実家の裏にある小屋

社会人になり、一人暮らしをしていた田中翔太は、久しぶりに実家へ帰省した。

両親が旅行に出かけるため、数日間留守番を頼まれたのだ。

「家は特に変わりないけど……」

家の裏手にある古びた小屋を見て、翔太は違和感を覚えた。

幼い頃からそこにある小屋。

しかし、両親は決して入ってはいけないと言っていた。

「物置なんじゃないの?」

そう思っていたが、ふと気づく。

両親は、あの小屋に入るのを一度も見たことがない。

「じゃあ、一体何が入ってるんだ……?」

ふとした好奇心が、恐ろしい結末を呼ぶとは知らずに。

第一章──開けてはいけない扉

その夜、家の中でテレビを見ていると、ふと裏庭から物音が聞こえた。

──ギィ……ギィ……

「……風か?」

小屋の扉が、わずかに揺れているのが見えた。

「ちょっと確認してみるか」

翔太は懐中電灯を持ち、小屋へ向かった。

扉には古びた南京錠がかかっていたが、経年劣化で今にも壊れそうだった。

「中を見たところで、どうせガラクタだろ」

そう思いながら、翔太は南京錠を蹴り壊した。

──ギィ……

扉がゆっくりと開いた瞬間、翔太は息をのんだ。

中には、まるで誰かが“今も住んでいる”かのような空間が広がっていた。

第二章──小屋の中の生活

埃こそ積もっているが、室内には生活の痕跡があった。

・布団が敷かれている。
・食器がきれいに並んでいる。
・テーブルの上には、開いたままの日記。

「……誰か住んでたのか?」

翔太は不気味に思いながらも、日記を手に取った。

そこには、見覚えのある字でこう書かれていた。

《1998年7月10日》
今日も夜になると、小屋の中からノックの音がする。
母さんは「開けてはいけない」と言うけど、僕は知っている。
ここに、誰かいることを。

「……え?」

翔太は寒気を覚えた。

この日記の筆跡は、幼い頃の自分の字だった。

「俺……こんな日記、書いたか?」

さらにページをめくる。

《1998年7月15日》
小屋の中を覗いてしまった。
そこには、僕と同じ顔をした子供がいた。
目が合った瞬間、そいつが僕に微笑んだ。

「そんな記憶、ない……」

翔太は日記を投げ捨て、小屋を飛び出した。

しかし、そこで決定的な違和感に気づく。

──扉が、内側から閉じられている。

「……え?」

誰かが、中にいるのか?

その瞬間、

コン……コン……

扉の向こうから、ノックの音が聞こえた。

第三章──もう一人の自分

翔太は背筋が凍りついた。

「……誰だ?」

返事はない。

ただ、コン……コン……とゆっくりとノックが続く。

「やばい……開けなきゃよかった……!」

慌てて家に戻ろうとした瞬間、背後からかすれた声が聞こえた。

「……開けてくれて、ありがとう」

振り向くと、小屋の扉がわずかに開いていた。

暗闇の奥から、翔太と同じ顔をした何かが、じっとこちらを見ていた。

口だけが不自然に動き、歪んだ笑みを浮かべている。

「今度は、君が入る番だよね?」

翔太は絶叫し、家へと駆け込んだ。

終章──小屋はまた閉じられる

翌朝、翔太は小屋の扉を再び南京錠で封じた。

鍵はどこかに捨て、二度と開けないと誓った。

しかし、帰り際、ふと裏庭を見ると、

小屋の窓から、自分と同じ顔の男がこちらを見ていた。

口元だけが、不自然に笑っていた。



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