怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

【中古のおもちゃ】夜中に話しかけてくる人形 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章:リサイクルショップでの出会い

「ねえ、これ買っていい?」

週末、佐々木優斗(ささき・ゆうと) は、妻の 美咲(みさき) と5歳の娘 菜々(なな) を連れて、近所のリサイクルショップに来ていた。

「どれ?」

菜々が指差したのは、少し古びたぬいぐるみの人形だった。

ピエロのようなデザインで、顔にはにっこりとした笑顔が描かれている。

「なんか……ちょっと不気味じゃないか?」

優斗はためらったが、美咲は笑って言った。

「安いし、菜々が気に入ったならいいんじゃない?」

値札には「特価:500円」と書かれていた。

(安すぎるな……。)

少し気になったが、菜々の嬉しそうな顔を見て、優斗は購入を決めた。

その時、店員が妙なことを言った。

「それ……夜中に勝手に動くことがあるって、お客さんから言われたことがあるんです。」

「え?」

「まあ、ただの気のせいでしょうけどね……。」

冗談めかした口調だったが、優斗はその言葉が妙に引っかかった。

第一章:奇妙な出来事

家に帰ると、菜々はさっそく人形を抱えて遊び始めた。

「ななちゃん、ななちゃん」

人形を抱きしめながら、菜々は楽しそうに話しかける。

優斗は苦笑しながらも、どこか落ち着かない気持ちだった。

その夜——

「パパ、起きて……」

深夜、菜々の声で目が覚めた。

「どうした?」

「ねえ……この子、しゃべったの。」

「……は?」

「『いっしょに あそぼ』って……。」

「おもちゃの音声機能じゃないのか?」

「ううん。ボタン押してないのに……。」

優斗は人形を調べたが、電池を入れる場所すらなかった。

「……気のせいじゃないか?」

そう言い聞かせて、その夜は何事もなく過ぎた。

しかし、これが奇妙な出来事の始まりだった。

第二章:人形のささやき

それから数日後、優斗は深夜に不気味な音で目を覚ました。

「カサ……カサ……」

何かが布を擦るような音がする。

「……菜々か?」

リビングに行くと——

人形が、ソファの上に座っていた。

(……いや、菜々が寝る前は、ベッドに置いてたはずだ。)

翌朝、ソファに人形はなかった。

美咲に聞いてみた。

「昨日の夜、菜々が人形をここに置いたのか?」

「え? 置いてないけど……。」

その日は、人形は玄関に置かれていた。

まるで、外に出ようとしているかのように。

第三章:人形の持ち主

不安に駆られた優斗は、購入したリサイクルショップに行き、店員に人形のことを尋ねた。

「すみません、この人形って、どこから仕入れたものなんですか?」

店員は少し戸惑った様子で答えた。

「えっと……正直、はっきりとは分からないんですが……。」

「何か知ってるんですよね?」

「実は、この人形、何度も店に戻ってくるんです。」

「……戻ってくる?」

「買取しては売れるんですが、買った人が皆『気味が悪い』って言って、すぐに返品してくるんです。」

「そんなこと、あるんですか?」

「もう最初に持ち込んだ人が誰なのか、記録が残ってないんです。」

「……。」

優斗は背筋が寒くなった。

(……この人形、どこから来たんだ?)

第四章:最後の夜

その夜、優斗は眠れずにいた。

(さすがに捨てるしかないか……。)

ふと、リビングの方から小さな笑い声が聞こえた。

「フフフ……フフ……」

「……菜々?」

寝室を確認すると、菜々はぐっすり眠っている。

「……じゃあ、誰だ?」

恐る恐るリビングへ向かうと——

人形が、ソファに座っていた。

しかも、いつの間にか口が開いていた。

「うわっ……!」

優斗は人形を掴み、すぐにゴミ袋に入れ、玄関に置いた。

「……もう終わりだ。」

そう思いながら寝室へ戻る。

しかし——

「パパ、だれか きたよ」

菜々の声がした。

「……?」

玄関のドアを開けると——

ゴミ袋は消えていた。

そして、玄関の床には、人形がぽつんと座っていた。

「いっしょに あそぼ」

にっこりと笑う人形の顔を見て、優斗は恐怖に凍りついた。



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