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白い空間の夢──目覚めるたびに変わる世界 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──白い部屋

大学生の田中翔太は、ある日から同じ夢を見るようになった。

夢の中で、翔太は真っ白な空間に立っている。

壁も床も天井もない。

どこまでも続く白い世界。

最初は「ただの夢」だと思っていた。

だが、毎晩その空間に入り、目覚めても昨日と同じ続きから夢が始まることに気づいた。

「こんな夢、普通じゃない……」

しかし、奇妙なことに、翔太はその夢の中で自由に動くことができた。

まるで、本当にそこにいるかのように。

第一章──空間に現れる扉

ある夜、翔太がいつものように白い空間を歩いていると、目の前に一枚の扉が現れた。

「……こんなの、今までなかったぞ?」

白い壁も何もない空間に、ぽつんと立つ扉。

取っ手に手をかけると、すんなりと開いた。

その先には──

まったく同じ光景が広がっていた。

「え……? ループしてるのか?」

不思議に思いながらも、そのまま扉をくぐる。

すると、また目の前に同じ扉が現れる。

何度も何度も開けるたびに、翔太は同じ白い空間へ戻るだけだった。

「……永遠にここから出られないのか?」

そう思ったとき、ふとある違和感に気づいた。

──扉を開けるたびに、ほんの少しだけ何かが変わっている。

たとえば、

・白いはずの空間のどこかに黒い点が現れる。
・床の感触が変わる。
・微かに風のような音が聞こえる。

「この空間は、少しずつ何かを変えている……?」

翔太は興味を持ち、夢の中でさらに探し続けた。

第二章──誰かの気配

それから数日後。

翔太は白い空間の中に、もう一つの違和感を見つけた。

──足跡がある。

「……俺以外に、誰かいるのか?」

足跡は扉とは別の方向へ続いていた。

翔太はそれを辿っていった。

どこまでも続く白い世界。

歩いても歩いても、景色は変わらない。

しかし、ある瞬間。

目の前に、「誰か」が立っていた。

それは、翔太自身だった。

「……俺?」

鏡のように同じ顔をしたもう一人の翔太が、静かに立っている。

だが、よく見ると、ほんの少し違う。

目が、翔太よりもわずかに青い。

その"もう一人の翔太"は、口を開いた。

「やっと来たね」

第三章──夢のもう一つの層

「お前、誰なんだ?」

翔太が尋ねると、"もう一人の翔太"は笑った。

「僕は君だよ。でも、少し違う君」

「……どういうことだ?」

「この空間は、無数の可能性が交差する場所。君は今、“夢の中”にいると思っているだろう?」

「……違うのか?」

「ここは夢だけど、ただの夢じゃない。『本当に存在するけど、存在しない場所』なんだ」

翔太は混乱した。

「じゃあ、お前は何なんだ?」

"もう一人の翔太"は静かに答えた。

「君が選ばなかった未来の一つ」

「……未来?」

「たとえば、君が昨日違う道を選んでいたら、違う君が生まれていたかもしれない。ここは、そんな“可能性の一つ”が集まる場所」

「じゃあ……お前は俺が選ばなかった未来なのか?」

「そう。そして、ここで待っていたんだよ」

「何を?」

"もう一人の翔太"は、静かに扉を指さした。

「この扉を開ければ、君は今の世界とは違う未来を選ぶことになる」

翔太は戸惑った。

「戻ることはできるのか?」

「もちろん。でも、一度でもこの扉を開けてしまったら、君の世界は少しずつ変わっていくよ」

翔太は、扉を見つめた。

開けるべきか、開けないべきか。

だが──

次の瞬間、翔太は目を覚ました。

終章──変わってしまった現実

「……夢か?」

ベッドの上で目を覚まし、スマホを確認する。

時間は午前6時30分。

普段と何も変わらない朝。

だが、一つだけ違っていた。

スマホの壁紙が、見知らぬ画像になっていた。

「……こんなの設定した覚えないぞ?」

よく見ると、それは白い空間に立つ自分の後ろ姿だった。

翔太はゾッとした。

「この扉を開ければ、君は今の世界とは違う未来を選ぶことになる」

夢の中の言葉が、頭の中で反響する。

「……もしかして、俺はすでに“違う未来”を選んでしまったのか?」

翔太はスマホの画面を見つめながら、背中に薄い寒気を感じた。

そして、その日から、彼の現実は少しずつ“違うもの”になっていった。



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