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【消えた紙芝居屋】語られてはいけない物語 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章:奇妙な紙芝居屋

「おーい、紙芝居やるよー!」

夏休みのある日、小学5年生の高橋悠斗(たかはし・ゆうと) は、近所の公園で見慣れない紙芝居屋のおじさんを見つけた。

白髪交じりのボサボサ頭に、黒い浴衣。
そして、ガタガタの木枠に入った古びた紙芝居。

(今どき紙芝居なんて珍しいな……。)

周りには、小学生の子どもたちが数人集まっていた。

「今日は特別なお話だよ。」

おじさんは、ゆっくりと紙芝居の表紙をめくった。

そこには、タイトルも何も書かれていない。

(変なの……。)

悠斗は違和感を覚えながらも、紙芝居を見つめた。

だが——

その瞬間、ゾワッと鳥肌が立った。

描かれていたのは、悠斗自身だった。

第一章:紙芝居の物語

「むかしむかし、あるところに——」

おじさんが話し始める。

次のページがめくられると、そこには悠斗が学校から帰る様子が描かれていた。

「えっ……?」

「ある少年は、夕方、公園の前を通りました。」

さらにページがめくられる。

次の絵には、悠斗が公園の前で紙芝居屋を見つける場面が描かれていた。

(……これ、今の俺じゃん。)

「そして、その少年は紙芝居を見に来ました。」

周りの子どもたちは不思議そうにしている。

悠斗はおじさんに向かって声をかけた。

「あの……これって、俺のことですか?」

おじさんはにっこりと笑い、次のページをめくった。

そこには——

“このあと、少年は紙芝居屋と一緒に消えてしまいました”

と書かれていた。

第二章:消える子どもたち

「え……?」

「なあ、これどういう話?」

他の子どもたちもザワザワし始めた。

しかし、おじさんは何も答えず、淡々とページをめくる。

次の絵には、悠斗の後ろに立つ黒い影が描かれていた。

「うわっ……なにこれ。」

影は、悠斗の肩に手をかけていた。

「やめてよ……。」

悠斗が立ち上がろうとした瞬間——

ザザッ!!

絵の中の影が、悠斗の方を向いた。

「うわぁっ!!」

悠斗は飛び上がった。

他の子どもたちも驚いて後ずさる。

(おかしい……これは、ただの紙芝居じゃない。)

次のページがめくられる。

そこには、悠斗が椅子に座ったまま公園から消えていく様子が描かれていた。

「おい、冗談だろ!?」

悠斗が慌てて立ち上がる。

しかし——

気づくと、さっきまでいた子どもが一人いなくなっていた。

第三章:語られてはいけない話

「おい! さっきここに座ってた子は!?」

「え……? そういえば……。」

みんなが気づく。

たった今まで隣にいたはずの子がいない。

「最初からいなかったんじゃない?」

「いや、いた! 確かにいた!」

しかし、不思議なことに、誰もその子の名前を思い出せない。

「では、次のページだね。」

おじさんが次のページをめくる。

そこには——

「次に消えるのは、この子です」

という文章とともに、悠斗の隣に座っていた男の子の絵が描かれていた。

「……やめろよ!!」

その瞬間——

風が吹き抜けた。

悠斗が目を開けると、また一人、子どもが消えていた。

最終章:最後のページ

「……次は誰かな?」

おじさんはゆっくりと、次のページをめくる。

そこには——

「最後に消えるのは、このお話を見ているあなたです」

という文字。

悠斗の心臓が跳ね上がる。

「やばい……これ、やばい……!!」

椅子から飛び上がり、一目散に公園を飛び出した。

背後で、おじさんの声が響く。

「最後まで見なかったね?」

悠斗は振り向かずに走り続けた。

エピローグ:消えた紙芝居屋

翌日——

悠斗は警察に行き、公園での出来事を話した。

しかし、警察官は首をかしげる。

「公園に紙芝居屋なんていなかったよ。」

「でも、昨日確かに……!」

「その時間、公園には誰もいなかった。そもそも、最近は紙芝居屋なんて見かけないしね。」

悠斗は愕然とした。

家に帰ると、スマホで昨日の写真を確認した。

そこには、公園の風景が写っている。

しかし——

椅子の上には、誰も座っていなかった。

紙芝居屋も、子どもたちも、いなかった。

(じゃあ……俺は誰と一緒にいたんだ?)

その瞬間——

スマホの画面が真っ暗になり、「続きはあなたの番です」という文字が浮かび上がった。



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