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深夜に鳴く猫──ついてきたのは何? 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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迷い猫の鳴き声

私は都内のアパートに一人暮らしをしている会社員だ。終電を逃し、仕方なく歩いて帰ることにした深夜2時。住宅街を抜ける細い路地で、「ニャァ…」というか細い鳴き声が聞こえた。

振り向くと、一匹の野良猫がじっとこちらを見ていた。痩せ細っていて、毛はぼさぼさ。目だけが異様に光っているように見えた。

「お腹すいてるのか?」

持っていたコンビニのおにぎりを差し出すと、猫は少し警戒しながらも食べ始めた。かわいそうに思い、「ついてくるならうちに連れて帰ってやるよ」と声をかけて歩き出す。

しばらく歩くと、ふと後ろから足音が聞こえた。

コツ、コツ、コツ…。

「猫の足音にしては変だな…」

不安になって振り返ると、そこには誰もいない。ただ、さっきの野良猫がじっとこちらを見つめているだけだった。

増えていく猫

アパートに着くまでの間、その猫はずっと後をついてきた。だが、不思議なことに、角を曲がるたびに猫の数が増えていく。最初は一匹だったのに、二匹、三匹と…気づけば十匹近くになっていた。

「こんなにいたか…?」

背筋がぞくりとした。しかも、どの猫もこちらをじっと見上げている。

部屋の前まで来ると、猫たちはピタリと足を止めた。そして、一斉に「ニャァ…」と鳴く。まるで何かを訴えているようだった。

ドアを開けようと鍵を差し込んだ瞬間、後ろから「ありがとう…」というか細い声が聞こえた。

反射的に振り向くと、猫たちは一匹残らず消えていた。まるで最初から存在しなかったかのように。

夢か現実か

翌朝、気になって昨夜猫を見かけた路地へ行ってみた。しかし、猫の姿は一匹もない。近所の人に聞いても、「そんな猫、見たことないよ」と言うばかりだった。

ただ、一つだけ奇妙なことがあった。路地の片隅に、小さな古びた花束が供えられていたのだ。まるで誰かがそこで亡くなったかのように…。

あの夜ついてきた猫たちは、一体何だったのか。

今でも、深夜になると、あの「ニャァ…」という声が耳元で聞こえる気がする。



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