目次
いつもの3人と転校生
俺たちユウスケ、ケンタ、マコトの3人は、小学生のころからいつも一緒に遊んでいた。
毎日放課後になると、近所の公園で鬼ごっこやサッカーをして遊ぶのが日課だった。
そんなある日、クラスにナナミという女の子が転校してきた。
ナナミはおとなしい子で、なかなかクラスに馴染めなかった。
最初のうちは話しかける子もいたけど、次第に彼女は少しやっかみやからかいの対象になってしまった。
「なんか、あの子地味じゃね?」
「転校生って、友達いないんでしょ?」
そんな言葉を聞くたび、なんとなく嫌な気持ちになった。
泣いていたナナミ
ある日、俺たち3人が学校から帰ろうとしたとき、昇降口の隅でナナミが一人でしくしく泣いているのを見つけた。
「……どうしたの?」
ユウスケが声をかけると、ナナミは涙を拭いて首を振った。
「なんでもない……」
でも、明らかに落ち込んでいた。
ケンタが「一緒に帰ろうぜ」と言うと、ナナミはびっくりした顔をした。
「え?」
「せっかくだし、帰りに公園寄ろうよ。」
マコトが笑ってそう言うと、ナナミは少し迷ったあと、小さくうなずいた。
公園での不思議な出来事
俺たちは、学校の近くにある古びた公園に向かった。
普段は他の子も遊んでいるのに、その日は妙に静かだった。
「なんか、今日人いなくね?」
「まあ、貸切で遊べるからいいじゃん。」
俺たちは気にせず、ナナミも交えて鬼ごっこを始めた。
ナナミは最初は遠慮していたけど、だんだん楽しそうに笑うようになった。
でも——その時だった。
「カラン……カラン……」
どこからか、鈴の音が聞こえた。
「……?」
俺たちは顔を見合わせた。
公園の隅にある古いブランコが、誰も乗っていないのにゆっくり揺れていた。
「風、吹いてる?」
「いや……全然。」
その瞬間、ナナミがブランコのほうをじっと見つめた。
「ナナミ?」
「……あの子、遊びたいんだって。」
「え?」
ナナミは誰もいないブランコに向かって、「一緒に遊ぶ?」と話しかけた。
すると——
ブランコが大きく揺れた。
「わっ!!」
「い、今の見た?」
風もないのに、まるで誰かが乗ったようにブランコが動いた。
「……ナナミ、誰と話してるの?」
「うん……公園にいる子。」
ナナミがそう言った瞬間、またカラン……カラン……と鈴の音が響いた。
俺たちはなぜか、怖くはなかった。
ただ、その瞬間——
世界が、ほんの少しだけ違うものに変わった気がした。
気づくと、公園の夕焼けがやけに鮮やかに見えた。
風が吹いて、どこからか知らない子どもの笑い声が聞こえた。
「……ナナミ、もう帰ろうか。」
マコトがそう言うと、ナナミは微笑んで「うん」と頷いた。
その日、公園のブランコは、俺たちが帰るまでずっと揺れ続けていた。
それからの4人
あの日以来、ナナミは俺たちと毎日遊ぶようになった。
彼女は明るくなり、クラスにも馴染んでいった。
俺たちは4人組になり、卒業までずっと一緒だった。
——そして、それから十数年後。
俺たちは久しぶりに集まり、飲みながら昔話をしていた。
「そういえばさ、覚えてる? ナナミが転校してきたばかりの頃のこと。」
「公園で遊んだときの話?」
「あのとき、誰も乗ってないのにブランコが揺れてさ……」
「ナナミが『遊びたいんだって』とか言ってたよな。」
みんなで笑いながら、ふとナナミを見ると、彼女は少し不思議そうな顔をした。
「……実はね、あの時のこと、あんまり覚えてないの。」
「え?」
「ただね、あの公園で遊んだ日から、不思議とみんなと仲良くなれたのは覚えてる。」
ナナミはそう言って、懐かしそうに微笑んだ。
「もしかしたら、あの公園にいた“誰か”が、私を助けてくれたのかもね。」
そう言われると、あの日の鈴の音や、色鮮やかに見えた夕焼けを思い出す。
——あの公園にいた何かは、俺たちを歓迎してくれたのかもしれない。
そして、ナナミが一人じゃなくなるようにしてくれたのかもしれない。
俺たちは、懐かしい気持ちでグラスを掲げた。
「あの不思議な公園に乾杯。」
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