怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

野良猫が見ていたもの 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

投稿日:

夜の路地裏

会社の帰り道、俺はいつも使う近道を歩いていた。

そこは細い路地裏で、街灯が少なく、夜になるとかなり暗い。

「……静かだな。」

昼間はそこそこ人通りがあるはずなのに、夜になると異様なほど無音になる。

俺は足早に通り過ぎようとした。

その時——

「ニャァ……」

小さな鳴き声がした。

ふと見ると、一匹の野良猫がいた。

黒と白の混ざった猫で、細い尻尾をピンと立てながら、じっとこちらを見つめている。

「……猫か。」

特に珍しくもない光景だが、なぜかその猫から目を逸らせなかった。

まるで、俺に何かを訴えかけているような目だった。

「……なんだよ。」

俺が一歩踏み出そうとした瞬間——

猫の視線が、スッと俺の背後へと移動した。

猫が見ているもの

その猫は、まるで俺の後ろに何かがいるかのようにじっと見つめている。

「……え?」

俺は思わず振り向いた。

——だが、何もいない。

街灯の薄明かりが差し込むだけの、ただの暗い路地裏。

「……気のせいか。」

俺は苦笑しながら再び歩き出した。

しかし——

猫はまだ、俺の背後を見ている。

さっきよりも、もっと目を大きく見開いて。

「……やめろよ。」

妙な寒気を感じながら、俺は足早に路地を抜けた。

ついてくる足音

路地を抜け、大通りに出た。

コンビニの明かりが眩しく感じる。

「……変な気分だ。」

俺はコンビニで飲み物を買い、家までの道を歩き始めた。

しかし、その時——

「コツ、コツ……」

後ろから足音が聞こえた。

(……誰か、いる?)

振り向くと、そこには——

さっきの野良猫がいた。

「……お前か。」

ホッと胸を撫でおろした瞬間、また足音が響いた。

「コツ、コツ……」

「……いや、猫の足音じゃないよな?」

確実に人の足音だった。

でも、振り向いても猫しかいない。

猫は、また俺の後ろをじっと見ていた。

さっきよりも、もっと、もっと怯えた目で。

「……ついてきてる?」

気味が悪くなり、俺は歩く速度を上げた。

すると、足音も同じ速度でついてくる。

「コツ、コツ、コツ……」

(気のせいじゃない……!)

俺は走り出した。

家まであと少し。

しかし、その時——

猫が道の真ん中に飛び出した。

「うわっ!!」

俺の目の前で、猫は大きく背中を丸め、牙をむき出して何かに唸っていた。

何か——

俺には見えない「何か」に。

そして——

「シャァァァァァ!!!」

猫が鳴いた瞬間、足音がピタリと止んだ。

スゥ……

何かが、遠ざかっていく気配がした。

野良猫が見ていたもの

俺は恐る恐る振り返った。

しかし、そこには何もいなかった。

ただ、街灯の下に黒い影のようなものが一瞬揺らいで消えた気がした。

俺は震えた声で猫に言った。

「お前……何を見てたんだ?」

猫は何も答えず、静かに俺を見上げた。

そして、まるで「もう大丈夫だよ」と言うように、軽く鳴いて路地の方へ消えていった。

それ以来、俺はその路地を通らなくなった。

だが、今でも思い出す。

あの猫は、いったい何を見ていたのか。

そして——

もし猫があの場にいなかったら、俺はどうなっていたのか。



■おすすめ

マンガ無料立ち読み

1冊115円のDMMコミックレンタル!

人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】

人気コミック絶賛発売中!【DMMブックス】




ロリポップ!

ムームーサーバー


新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp



世界の心霊写真 ~カメラがとらえた幽霊たち、その歴史と真偽

新品価格
¥3,080から
(2024/10/17 10:26時点)



ほんとうにあった怖い話「年上の彼女」



ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ]

価格:1078円
(2024/7/23 13:25時点)
感想(1件)



-怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集
-, , , , ,

Copyright© 映画・ドラマ・本・怖い話・奇妙な話・不思議な話・短編・ガールズ戦士シリーズ・Girls2(ガールズガールズ)などの紹介・感想ブログです。 , 2025 All Rights Reserved Powered by STINGER.