会社の帰り道、いつも通る細い路地に一匹の野良猫がいた。
黒い毛並みに黄色い目。
首輪はなく、痩せてもいない。
「またいるな……」
最近、この猫を毎晩見かけるようになった。
俺が通るたびに、じっとこちらを見つめてくる。
それだけならよくある話だが——
どういうわけか、この猫は絶対に"瞬きをしない"のだ。
目次
猫の視線
最初は気のせいだと思っていた。
猫は獲物を狙う時に瞬きをしないことがある、と聞いたことがある。
でも、この猫は違う。
俺がどれだけ近づこうと、どれだけ時間が経とうと、一切まばたきをしない。
試しにしゃがんで手を差し出してみた。
「ほら、おいで」
だが、猫は動かない。
ただじっと——
まるで俺の顔を"覚えよう"としているかのように、見つめ続けている。
その日は何となく嫌な気分になり、足早に帰宅した。
奇妙な足音
その夜、ベッドに入ると、部屋の外でコツ……コツ……と小さな足音が聞こえた。
「……猫?」
そんなはずはない。
俺の部屋はマンションの三階だ。
窓の外を確認するが、何もいない。
「気のせいか……」
そう思いながら、俺は眠りについた。
しかし——
翌朝、玄関の前に猫の毛が数本、落ちていた。
増える猫たち
それから数日後。
俺は会社帰りに、いつもの路地を通った。
あの黒猫は——今日もいた。
「……またお前か」
だが、その日は違った。
猫は一匹ではなかった。
周りに、同じ黒い猫が増えている。
五匹、十匹……いや、それ以上。
全員が、同じようにじっと俺を見ている。
そして——
やはり、一匹たりとも"瞬きをしていなかった"。
「……っ」
ぞっとして、その場を離れた。
足早に歩きながら、後ろを振り向かないようにする。
しかし、背後から——
コツ……コツ……
猫の足音が、俺を追ってくる。
最後に見たもの
必死に家へ帰り、鍵を閉めた。
「なんなんだよ……」
ソファに倒れ込み、深いため息をつく。
だが、ふと気づいた。
ベランダのガラスに、何か映っている。
恐る恐る振り向くと——
そこに、"黒猫の目"が無数に並んでいた。
瞬きをせずに、じっと俺を見つめていた。
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