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野良猫の集まる場所──見てはいけない光景 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──黒猫との出会い

会社員の田中翔太は、毎日同じ時間に帰宅する生活を送っていた。

ある日、家の近くの路地裏で、黒い野良猫を見つけた。

「お、猫か……」

黒猫は痩せていたが、毛並みは綺麗で、どこか人間を観察するような目つきをしていた。

「飼い猫だったのか?」

そう思いながらも、その目つきにやられて、軽く挨拶をして通り過ぎた。

しかし、それから数日後──

その黒猫は、毎晩のように翔太の帰宅時間に合わせて現れるようになった。

まるで待っているかのように。

「……お前、俺についてきてるのか?」

黒猫は何も答えず、じっと翔太を見つめていた。

そしてある夜、翔太はふと異変に気づいた。

「この猫……ずっと俺の家の方を見てないか?」

第一章──増えていく野良猫たち

最初は黒猫だけだった。

しかし、ある日を境に、野良猫がどんどん増え始めた。

茶トラ、白猫、サビ猫……。

気づけば、路地裏には10匹以上の猫が集まるようになっていた。

そして、全員が無言で翔太の方をじっと見つめている。

「なんだよ……気味悪いな」

翔太が歩くと、猫たちも動く。

止まると、猫たちも止まる。

まるで、監視されているようだった。

「もしかして、俺がエサでもやったと思ってるのか?」

しかし、翔太は猫に何かを与えた覚えはない。

ただ、一つだけ心当たりがあった。

──黒猫に最初に挨拶をしたこと。

「……まさかな」

そう思いながら、家のドアを開ける。

すると、背後から「コトン」と小さな音がした。

振り返ると、黒猫が玄関の前に何かを置いていた。

それは、小さな骨だった。

「……何の骨だ?」

翔太は鳥肌が立った。

これは、何を意味している?

第二章──猫が見つめる先

それから数日、猫たちは毎晩同じ場所で翔太を待っていた。

だが、ある夜。

ついに翔太は、異変の核心に気づく。

「……あれ?」

猫たちは、翔太を見ているのではなかった。

翔太の後ろを見ているのだ。

「……何か、いるのか?」

背中に嫌な汗が流れる。

振り向いても、何もいない。

しかし、猫たちは明らかに何かを目で追っている。

それも、翔太の背後を通って、家の中へ入っていくように……。

「……気のせい、だよな?」

だが、その夜。

家の中で、翔太は誰もいないはずの部屋から物音を聞いた。

第三章──部屋にいる何か

夜中、カタン……と机の上のコップが倒れる音で目を覚ました。

「……地震か?」

いや、そんな揺れは感じない。

それに、部屋の窓は閉まっている。

「風じゃない……じゃあ、何だ?」

ゾクリと背筋が寒くなる。

そして、ふと気づいた。

──黒猫が、窓の外から部屋の中をじっと見ていた。

「……お前、何を見てる?」

翔太は思い切って猫の視線の先を振り返った。

そこには、何もいなかった。

しかし、翌朝。

玄関の前に、また骨が置かれていた。

今度は、人間の指の形をしていた。

終章──猫が導くもの

翔太は恐怖に耐えきれず、霊感の強い友人に相談した。

「猫って、時々“見えるもの”を追うっていうじゃん?」

「……お前、何か心当たりないの?」

「いや……」

だが、友人は家の間取りを聞くと、こう言った。

「お前の部屋、昔そこで人が死んでるぞ。」

「え?」

「しかも、遺体の一部が見つかってないらしい。だから、ずっと“彷徨ってる”んじゃないか?」

翔太は凍りついた。

「じゃあ……猫たちは?」

「お前を見てたんじゃない。お前の後ろにいる“それ”を見てたんだろ」

翔太は唇を震わせた。

「……それで、猫が骨を持ってくるのは?」

友人は無言になった。

だが、やがてこう言った。

「……猫ってさ、恩返しのつもりで飼い主に獲物を持ってくることあるよな?」

「まさか……」

「お前の周りにいる猫たちは、“それ”を追い払おうとして、少しずつ集まってるんじゃないか?」

翔太は震えながら、玄関の前の骨を見つめた。

次に持ってこられるのは、何の骨なのか。

そして、それが“誰のもの”なのか──。



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