目次
祖父の遺品
俺の祖父は古いものを集めるのが趣味だった。
亡くなった後、遺品整理をしていると、一枚の掛け軸が出てきた。
それは、黄ばんだ紙に奇妙な文字が書かれた掛け軸だった。
「なんて書いてあるんだ?」
毛筆で書かれた文字は、漢字のようにも見えるが、読めそうで読めない。
しかし、不思議なことに、じっと見つめていると——
「……あれ? なんとなく読める……?」
最初は意味不明だった文字が、頭の中で勝手に意味を成していく。
「汝(なんじ)、此(これ)を読ム時、扉ハ開カレ……」
俺は息を呑んだ。
その瞬間——
ブツッ……
部屋の電気が、一瞬だけ消えた。
「……今の、何?」
不安を感じつつも、そのまま掛け軸を元の場所に戻し、寝ることにした。
しかし——その夜から、俺は悪夢を見るようになった。
悪夢の中の掛け軸
その夢は、まるで現実のようにリアルだった。
俺は見知らぬ和室に立っていた。
古びた畳、蝋燭の灯る薄暗い部屋、そして——
正面の壁に掛けられた、あの掛け軸。
「……なんで、ここに?」
掛け軸をじっと見つめると、文字が勝手に浮かび上がり、蠢き始めた。
「汝、既ニ見タリ……」
「……え?」
すると、背後でギシ……ギシ……と畳がきしむ音がした。
振り返ると、そこには——
黒くねじれた何かが立っていた。
顔はない。
ただ、無数の目がこちらを見つめている。
「うわぁぁ!!」
その瞬間、そいつがガバッ!と腕を伸ばし、俺の首を掴んできた。
そこで目が覚めた。
「ハァッ……ハァッ……!」
心臓がバクバクと鳴り、全身が汗でびっしょりだった。
「……ただの悪夢か……?」
しかし、鏡を見た瞬間、俺はゾッとした。
首に、黒い手形がくっきりと残っていた。
掛け軸の文字が変わる
翌日、怖くなった俺は、再び掛け軸を確認した。
すると、昨夜読んだはずの文字が、変わっていた。
「尚モ読ム時、招カレントス……」
「読むほど、何かが近づいてくる……?」
不安になった俺は、掛け軸を処分することを決意した。
その日の夜、神社へ持っていき、神主に相談した。
すると、神主の顔が急に険しくなった。
「……これ、どこで手に入れました?」
「祖父の家で見つけました。処分したいんですが……」
神主はため息をつき、こう言った。
「これは“招霊の掛け軸”です。
読んだ者を狙い、“何か”をこちらの世界に呼び寄せる……」
「じゃあ、俺は……?」
神主は黙って、懐から小さな紙片を取り出し、掛け軸の上に貼り付けた。
「……間に合えばいいのですが」
そう言われ、俺はさらに不安になった。
もう遅かった
その夜——
俺は再び夢を見た。
今度の夢では、掛け軸の部屋の奥に、襖(ふすま)のようなものがあった。
そして、掛け軸には、こう書かれていた。
「門ハ開カレタ」
「開かれた……?」
その瞬間、襖がガタガタガタガタ!!と激しく揺れた。
「……やばい……!」
俺は必死に目を覚まそうとした。
しかし、目が覚めても、悪夢は終わらなかった。
耳元で、かすかな囁き声が聞こえた。
「オ前、読ンダ……」
そして——
掛け軸のある部屋の襖が、ゆっくりと開いた。
その先にいたのは——
昨日、夢で見た“黒くねじれた何か”だった。
夢の中ではなく、現実に。
俺は声を出そうとしたが、喉が動かなかった。
「ヒヒ……アァ……」
そいつはゆっくりと近づいてきた。
掛け軸の文字が、血のように滲みながら、最後の一文を浮かび上がらせた。
「モウ逃ゲラレナイ」
俺の視界が、闇に包まれた。
——次に目を覚ました時、俺はもうこの世界にはいないのかもしれない。
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