目次
理想の部屋
転勤を機に、俺は新しいアパートへ引っ越した。
築浅で家賃も安く、間取りも申し分ない。駅も近く、買い物にも便利。
「いい物件が見つかったな……」
そう思いながら、新生活をスタートさせた。
しかし、住み始めて数日経ったころ——
小さな違和感を覚え始めた。
ずれる記憶
例えば、玄関の靴の位置。
仕事から帰ると、朝出かけるときと微妙に違う場所に置かれている。
「気のせいか……?」
キッチンの棚にしまったはずのコップが、勝手にシンクに置かれている。
「……俺、昨日ここに置いたっけ?」
寝る前に必ず閉めたはずのカーテンが、朝起きると少しだけ開いている。
……こんなことが何度も続いた。
最初はただの勘違いかと思っていたが、次第に気味が悪くなってきた。
そして、決定的な違和感に気づいたのは——
引っ越してから10日目の夜だった。
もうひとつの鍵
その日、会社から帰ると、ポストに鍵が入っていた。
見覚えのある鍵——俺の部屋の鍵だった。
「……なんで?」
鍵は普段、玄関の鍵穴に差したままにしているわけじゃない。
俺はいつも、外出時にはポケットに入れて持ち歩いている。
「まさか、落としたのを誰かが入れてくれた……?」
いや、それもおかしい。
だって——
俺の鍵は、今もポケットの中にある。
「じゃあ、これは……?」
手のひらの鍵と、ポケットの鍵。
見比べると、どちらもまったく同じものだった。
「スペアキー?」
しかし、俺は管理会社から渡された鍵しか持っていない。
……では、ポストに入っていたこれは、誰の鍵なのか?
その瞬間、ある考えが頭をよぎった。
「この鍵を使ったら……何かがわかるかもしれない。」
俺は意を決して、ポストに入っていた鍵を玄関の鍵穴に差し込んだ。
カチリ。
問題なく回った。
ドアを開け、中へ入る——
その瞬間、強烈な違和感が襲った。
もう一人の俺
部屋の中は、いつも通りだった。
しかし、なぜか見慣れた部屋が、まったくの別物に見えた。
家具の配置は変わっていない。
置いてあるものも同じ。
でも、何かが決定的に違う。
違和感の正体を探そうと、部屋を見渡す。
……その時だった。
テーブルの上に、スマホが置いてあるのを見つけた。
「え?」
俺はスマホをポケットから取り出した。
もちろん、手の中には俺のスマホがある。
では——
テーブルの上に置かれているのは、誰のスマホなのか?
そう思った瞬間——
バイブ音が鳴った。
テーブルのスマホが、着信を知らせて震えている。
恐る恐る画面を見ると、そこには見覚えのある名前が表示されていた。
「俺」
「……っ!!」
その瞬間、背後から——
「おかえり。」
自分とまったく同じ声がした。
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