目次
祖父の遺品
祖父が亡くなった後、俺は遺品整理のために田舎の旧家を訪れた。
山奥にある古びた日本家屋。幼い頃、夏休みに遊びに来たことがあるが、もう何年も足を踏み入れていなかった。
家の中には、骨董品や古い書物が山積みになっていた。祖父は古美術商をしていたため、どこかの寺や旧家から譲り受けた品が多かったらしい。
埃をかぶった棚を整理していると、一つの掛け軸が目に止まった。
それは異様な代物だった。
描かれていたのは、異形の何か。
人間のようでいて、人間ではない。無数の手が絡み合い、幾つもの目がこちらを見ている。体の輪郭は曖昧で、まるで闇そのものが具現化したようだった。
裏には、達筆な筆でこう記されていた。
「決して解くな」
禁忌を破る
遺品整理を手伝っていた従兄弟のタカシが、興味深そうに掛け軸を見つめた。
「何これ…なんか気味悪いな。でも、こんなもんがあったら価値がつくかもな。」
俺は嫌な予感がした。
「やめとけよ、こんなの置いといたら呪われるぞ。」
だが、タカシは笑いながら掛け軸を広げた。
その瞬間──
ゴォォォォォォ……
まるで空気が歪むような感覚がした。
家の中の明かりが一瞬揺らぎ、掛け軸の中から何かが這い出てくるような錯覚に陥った。
ズル…ズル…
いや、錯覚ではなかった。
掛け軸の中の闇が、実際に溢れ出していた。
魍魎、解き放たれる
タカシが慌てて掛け軸を巻こうとするが、もう遅い。
掛け軸の表面がどろどろと崩れ、そこから何本もの黒い手が伸びてきた。
「う、うわああああっ!!」
タカシが悲鳴を上げる。
その手は異様に長く、ねじくれ、まるで意志を持ったかのようにタカシの腕を掴んだ。
「アァ……アァアアア……」
掛け軸の中から、かすれた呻き声が響いた。
それは言葉ではない。怨嗟、飢え、狂気──この世ならざるものの嘆きだった。
タカシの顔が恐怖に歪む。彼の腕は黒い影に包まれ、みるみるうちに痩せ細っていった。
俺は必死で掛け軸を奪い取り、乱暴に巻き戻した。
その瞬間──
スゥ……
異形の手はすべて消え、掛け軸は元の静寂を取り戻した。
ただし、タカシの腕には黒い痣が残っていた。
終わらぬ恐怖
翌日、俺たちは掛け軸を祖父が大切にしていた蔵に封印した。
「あれ、なんだったんだろうな…」
タカシは腕の痣をさすりながら呟いた。
俺は答えられなかった。
ただ、祖父がこれを決して解くなと記していた理由は、痛いほど分かった。
それから数日後、タカシから電話があった。
「……おい、夜中にさ……俺の部屋の壁、何か動いてるんだよ。」
電話越しに聞こえたのは、
ズル……ズル……
どこかで聞いた、不気味な音だった。
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